第20章 明石国行 眼鏡の奥の熱い春情・:*+.
ーある日の夜。
近侍の清光と報告書を作成しながら、私はある事ばかりが気にかかってしまい、憂鬱な気分で頬杖をつく。
「はぁ…緊張するなぁ…」
「明日の審神者面談のこと?」
「うん。去年は散々だったよね…。」
「確かに…。まぁ、そんなに心配しないで。今年も俺が付いて行くからさ。明日の晩ご飯は燭台切に頼んで、主の好きな物いっぱい作ってもらっとく!鶏の唐揚げと鰆の西京漬けと…食後は白餡のどら焼っ!ねっ?だから辛いことも一緒に乗り切ろう。」
「ふふ…さすが初期刀。私が元気になる方法分かってるね。」
「でしょ?俺を誰だと思ってるの!主…報告書の準備でここ数日寝不足でしょ?今日はぐっすり寝てね。」
清光は私の眼の下の隈を心配そうに撫でる。
「ありがとう。清光、明日は宜しくね。」
自室に戻る清光を見送り、不安げに脈打つ胸を押さえながらベットに横たわる。
"審神者面談"。
一年に一回行われる政府主催の"恐ろしい"行事。
審神者(本丸)の実績や、刀剣の評価、政府への貢献度などを、ものすごく辛口の監査官に評価される。
怒られることはあっても、褒められることは皆無。
うぅ…せめて少し優しい監査官に当たりますように…。
今年は清光と明石さんに同行してもらう予定だ。
初期刀の清光は毎年参加してくれているし、明石さんは…なんとなく、私の緊張をほぐしてくれそうで選んだ。
明石さんとは普段あまり深く関わることは無いけれど、彼が近侍の時はなぜかすごく安心できる。
「ほな、肩の力抜いて気楽にやりましょ。」
ふふ…あの緩い感じが心地いいのかな。
「自分になーんも期待したらあきまへん。」
なんて言いながら、私が作成した書類の誤りは何も言わずに直してくれたり、私が疲れてる時は甘い物をそっと机に置いておいてくれたり…。
ちょっと誤解されやすい性格だけど、任務もしっかりこなしてくれるし、面倒見が良くて優しい。
明石さんがいてくれたら面談で落ち込んでもきっと大丈夫…ふぁぁ…。
そんな事を考えていたら、目蓋がどんどん重くなってきて、私は夢の世界に誘われた。