第19章 髭切 姫彼岸花の約束・:*+.
「…っ!…う…そ…?どうして?」
その先に待っていたのは、赤いリボンを右手首に巻いて朗らかに微笑む"彼"だった。
「やぁ。いいこにして待っていてくれたかな?っ…おっと…いろは?」
「っ…!!髭切さんっ…!」
私は髭切さんに駆け寄るとぎゅっと抱きつく。
「ふふ…約束したもんね。君を絶対に見つけるって。この髪留め、やっぱり君によく似合うね。うん。可愛い。」
優しく抱きしめ返してくれる髭切さんは、私があの日から毎日付けている姫彼岸花の髪留めにそっと触れる。
「どうして?そんなっ…!ふぇ…花山院さまの刀剣がっ…まさか髭切さんに会えるなんて…」
「おやおや。大丈夫だよ。よしよし…もう泣かないで?これからはずっと一緒だからね。」
「あっ…兄者…これは?」
「ねぇ?いろは…こいつ誰!?何でいろはと抱き合ってるの!?」
気がつくと私達は混乱した顔の刀剣達に囲まれていた。
「あっ…!えっと…ごめんなさい…わっ!」
現実に引き戻された私は真っ赤になった顔を両手で隠し、髭切さんから離れた…のだが…ぐいっと腕を引かれ、彼の片腕に閉じ込められてしまった。
「ふふ。驚かせてごめんね?僕は髭切。こっちは弟の…うーんと…」
「"膝丸"だ…兄者。今は亡き元主の強い願いでこの本丸で世話になる事になった。兄弟共々よろしく頼む。
さて置いて…兄者?その審神者とは…一体どういう…」
「あぁ。彼女は僕の奥方だよ。」
「えっ!?!?」
「髭切さん…!?」
「はぁ!?僕の許可なくいろはを娶るなんていい度胸だなァ!ヤんのかオラァ?…ころ!せないから半死にしてやる!」
「やっ…安定くんっ!!落ちついて!!」
「あははは。なかなか絢爛な歓迎だなぁ。この本丸は楽しいね?どれどれ、先輩が胸を貸してあげようか。」
「ちょっ…!二振りとも抜刀しないでっ!!」
「あっ…兄者ぁ…!!」
爽やかに笑う髭切さんとは打って変わって、安定くんや他の刀剣達は泣くわ喚くわの大騒動になってしまった。
ー夜。
「はぁ…大変だったなぁ。」
その後、ちゃんと事の成り行きを刀剣達に説明した私は自室へと歩みを進める。
安定くん…怒ってたけど、いつかきっと分かってくれるよね。
「おかえり。」
「ふふ…ただいまです。」
自室の扉を開けると、柔らかい笑顔で迎えてくれた髭切さんの胸に飛び込む。