第19章 髭切 姫彼岸花の約束・:*+.
「琥珀!髭切さんにこれ以上手を出さないで!」
「むっ…。我以外の男の為に必死になる姿は無性に腹が立つな。生憎、我は独占欲が強くてな…余計に奴は邪魔だ。」
子供のようにそっぽを向く琥珀は、全く聞く耳を持たない。
私は必死に考えを巡らせる。
何としてでも髭切さんを守らないと!
私は覚悟を決めて、くるっと振り返ると、琥珀にちゅっと口付けた。
「っ…!」
見る見るうちに琥珀の頬が赤く染まっていく。
動揺で腕の拘束が緩んだ瞬間、帯に忍ばせた加護札をさっと取り出し、髭切さんに飛ばす。
「髭切!私の加護を貴方に!」
「ギエアアアアアアアアアアア!!」
バンっ!!!
髭切さんに斬り飛ばされた敵が本殿の壁を突き破って外の闇へと消える。
白鳥が乱舞するかのような華麗な刀捌きで、次々と敵を打ち拉ぐ髭切さんは圧巻で、瞬きも忘れて魅入ってしまう。
睦月の刀剣男士、髭切。
彼は"別格"だ…。
「主の命にて、汝らを討たん!」
渾身の一撃が琥珀の目の前に迫る。
躊躇なく振り落とされた一撃が琥珀の左腕に深く食い込む。
「くっ…!」
「去れ。さもなくば、その首を斬り落とす。」
「ふっ…今日のところは帰城した方が良さそうだ。いろは。我の"初めて"を奪った責任は取ってもらうよ?必ずお前を手に入れる。」
琥珀は血が滴る左腕をぐっと押さえながら、私に艶っぽく微笑むと瞬時に消えてしまった。
「はぁはぁ…」
その場に崩れ落ち、苦しそうに呼吸を乱す髭切さんに駆け寄る。
「髭切さんっ!もっと加護札をっ…!」
「情けないなぁ。他人に嫉妬して僕が鬼になっちゃうなんて…」
「きゃっ…!…んっ」
ばんっと床に押し倒されて、強引に唇を奪われる。
「僕ね…今すごく怒っているみたい。君にあんな事をさせてしまった僕自身に。」
「あっ…んっ…!ひげき…ふぁ…!」
口付けはどんどん深くなり、角度を変えて何度も繰り返される。
琥珀との口付けを消し去るように、唇を舐められて、吸われて、塞がれて、噛みつかれて…呼吸さえ許してもらえない。
あぁ…これは髭切さん以外の人に触れてしまった私への罰だ。
なのにこんなにも甘くて愛しい…。
「もっと強くなるから…僕に君を独り占めさせてくれない?」
その言葉が私の胸をきゅっと締め付け、髭切さんの首にぎゅっと腕を回す。