第19章 髭切 姫彼岸花の約束・:*+.
「…いいや。俺に比べればまだまだだぞ?」
「あなや。上には上がいたな…。はははっ…」
旧知の間柄の花山院さまと三日月さんは、友のように無邪気に笑い合う。
「今最後の子を修行に出しているところなんだ。おそらくその子が私が面倒をみれる最後になるだろう。」
「そんな…」
私は鼻にツンとした痛みを感じ、必死に堪えるように唇を噛み締める。
「そんな顔をしないでくれ。いろはのような優秀な審神者や刀剣達を随分と育ててこれた。私に悔いはない。本当に幸せだったよ。」
「花山院さま…私に何かできることはありますか?」
「あぁ。実はいろはに頼みたいことがあってね…私の最後の頼みだ。聞いてくれるかい?」
꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°
ー鎌倉時代。
数日後、私は政府からの命を受け、相模国鎌倉に視察に来ていた。
「まさか…時空移転装置が故障して刀剣を連れて来れなかったなんて…」
審神者として不甲斐なさすぎる。
安定くん…。急に私だけが消えちゃって、驚いてるだろうな…大丈夫かな…。
何よりもこの時空移転装置…動くのかな?
私…本丸に帰れるのだろうか?
そんな事を悶々と考えていたら、ドンっと目の前の男性にぶつかってしまった。
「あっ…!申し訳ございません。」
「へぇ。良い女じゃねぇか…。詫びはあっちで聞いてやるよ?」
「くくっ…ちょうど暇してたんだ。一緒に遊ぼうぜ。」
「急いでいますので…っ!ちょっ…離してください!」
ガラの悪い男たちに無理やり路地裏に連れてこられた私は必死の抵抗も虚しく、簡単に押し倒されてしまった。
「やっ…!やめてっ!んっ!」
口を塞がれ、腕を強引に押さえつけられ、ゴツゴツした手が太腿をなぞる。
恐怖で震えて、上手く息が出来ない。
着物の帯に手をかけられ、さぁっと血の気が引いていく。
誰か、誰か助けて…
「ねぇ君たち。その子に何してるの?」
刹那、切迫した空気に似つかわしくない、柔らかなのんびりとした声が路地に響く。
「あ"ぁ?なんだお前?お前には関係ねぇだろ。斬り殺されたくなきゃ行きな!」
「うーん。確かに関係はないんだけど…。その子嫌がってるように見えるなぁ。…ねぇ君。僕の助けが必要かな?」
「んっー!んっー!!」
私はこくこくと頷き、潤んだ瞳で必死に訴える。