第18章 大倶利伽羅 蕩けるチョコは甘い媚薬・:*+.
「…?!…おい、退け。」
「ふふ…。私を本気にさせたのは貴方が初めてですよ?想い合う二人を見てると余計に欲しくなっちゃった…」
「何を…っ!」
「今日はバレンタインですからね…。私の気持ちを受け取って?」
美月は大倶利伽羅の不意を突いて、ぐっと椅子の背に深く押し倒すと口にチョコレートを押し込む。
「甘くて美味しいでしょう?…どんな味がしますか?」
ぐっと顔を近づけて、大倶利伽羅の唇を妖艶になぞる美月。
むせ返るほどの甘い香りを纏った美月と、口から全身に広がるチョコレートの味に大倶利伽羅は目眩を起こしそうになる。
「…っ!」
次の瞬間、大倶利伽羅の顔が歪み苦しそうに胸を押さえる。
ばくばくと激しく脈打つ鼓動。
頭がずきずきと痛みだし、熱を帯びる身体。
五感全てが性感帯のように敏感になり、自分の身体が自分の物でなくなる。
「…お前…何を入れた?」
「ふふ…すぐに気持ちよくなりますよ。ご自身の欲望に忠実になってくださいね?」
「欲望に忠実?」
「はぁぁ…男性はみんな同じ…。私が欲しくて堪らない…って目をされてますよ?」
美月は自分の着物の襟を大きく広げて素肌を晒すと、大倶利伽羅の服の中に手を入れて優しく撫でる。
いつもよりも敏感にぞくぞくと感じる愉悦。
触れられた箇所は熱く、鼓動がさらに速まり、確実に身体は快楽を求めている。
触れたい。
愛されたい。
一つになりたい。
だが違う…。
この手じゃない。
この香りじゃない。
この声じゃない。
「ふっ…そうだな。欲望に忠実になることにする」
「ふふ。楽しみましょう?…っ!痛っ!ちょっと何するの!?」
大倶利伽羅は美月をどんっと押し除ける。
「お前は必要ない。俺は今から惚れた女を抱きに行く。」
「っ!あんな子供じみた審神者より私の方が何倍も綺麗じゃない!!…きゃっ!」
大倶利伽羅は壁に思いっきり拳を打ち付け、鬼気迫る瞳で美月を睨む。
「いろはは綺麗だ。お前とは違う。」
「はぁ?!」
「人の内面は顔に現れる。お前は俺が欲しいんじゃなく、いろはから愛刀を奪いたいだけだろ?」
「っ…!」
「いろはを傷つけるようなら女でも容赦しない。…失せろ。」
ぴりぴりとした殺気を纏った大倶利伽羅に、恐怖心が芽生えた美月はその場でへなへなと怖気付き、そのまま逃げるように本丸から姿を消した。