第18章 大倶利伽羅 蕩けるチョコは甘い媚薬・:*+.
そのままぐっと顎を持ち上げられて、口付けられると、微酔のような心地よい快感が身体を包む。
伽羅の触れる手はいつだって甘くて優しい。
今日はバレンタインなのに…私が伽羅に身も心も溶かされてしまいそうだ。
こんなに幸せでいいのかな…幸せすぎて怖くなってしまう。
神様が私に何か試練を与えるんじゃないかって…。
そんな両極端な気持ちを心に宿しながら、伽羅と甘いひと時を過ごした。
「主!お客さん来てるよ〜!」
「え?お客さん…誰だろう?」
「新人審神者の研修?だって」
「あっ!…忙しくてすっかり忘れてた!」
私は政府から新人審神者研修の受け入れを要請されていたことを思い出し、急いで玄関へと向かう。
「新人審神者の美月と申します。」
「政府から話は聞いています。どうぞ宜しくお願いします。」
すごく綺麗な方だなぁ…。
私は挨拶をしながら、美月さんをじっと見つめる。
彼女は女の私でも見惚れてしまうぐらいの容姿で、その仕草や声色までも艶っぽく、思わず息を飲んでしまう。
「いろはさん…如何されました?」
「あっ!…すみません…あまりにお綺麗で…。詳しいお話は部屋でしましょう」
「あら、お上手ですね。ふふ…ありがとうございます。」
美月さんを部屋へ案内しようと、廊下の角を曲がった瞬間、どんっ!っと彼女と誰かがぶつかる。
「っ!申し訳ありません。」
「すまない。大丈夫か?」
その声を聞いた瞬間、どきどきと鼓動が早くなる。
よろけた美月さんの腕を引き、逞しい身体で支える伽羅。
「大丈夫です。こちらこそすみません。」
うわぁ…美男美女だなぁ…。
並んだ二人を呆然と見つめてしまう。
"羞月閉花"という言葉がぴったりな彼女。
神様は不公平だな…。私は色気のかけらもない自分に苦笑しながら思わず俯く。
「いろは?光忠がお前を探していた」
「わっ!伽羅…あっ…燭台切さんが?」
伽羅の声で現実に引き戻され、急に間近に迫ったその端正な顔立ちに顔が熱くなる。
何度見ても見惚れちゃう…本当に伽羅って素敵だなぁ…。
「光忠と何かしてるのか?」
「ふふ。伽羅には内緒だよ」
「…なら光忠を問い詰める。」
「えっ!それはだめだよ?」
その時私は気づいていなかった。
甘い空気を纏いながら仲睦まじげに話す伽羅と私を見つめる美月さんが、美しい顔を歪めて唇を噛み締めたことに…。