第18章 大倶利伽羅 蕩けるチョコは甘い媚薬・:*+.
「もう春か…」
出陣中の大倶利伽羅は、少し膨らみ始めた梅の蕾を眺めて呟く。
「伽羅!早く片付けて本丸に帰ろうぜ!」
「あぁ。」
「それに…主に早く会いたいだろ?」
「…」
口元を緩ませた大倶利伽羅の表情が肯定を意味し、太鼓鐘貞宗はくすっと笑った。
ー同時刻の本丸。
「じゃあ次は生地を作ろうか!」
「燭台切さん…本当にありがとうございます。」
「お菓子作りなら僕に任せて!明日はバレンタインだもんね。」
「はい。この前伽羅がチョコレートのお菓子をすごく美味しそうに食べていたので…」
「伽羅ちゃんはああ見えて甘党だからね。」
私たちは顔を見合わせてくすくすと笑う。
「明日は失敗しないように頑張ります!」
「僕がしっかり教えるから心配しないで。伽羅ちゃんきっと喜ぶよ!」
「喜んでくれると良いんですが…」
甘い香りに包まれながら、私は淡い期待を胸に宿した。
ー夕刻。
仕事を終えた私はそわそわしながら、部隊の帰城を待っていた。
「主ー!今戻ったよー!」
「皆さん!お帰りなさい!長期任務お疲れ様でした。」
私は一週間の長期任務を終えた刀剣達を笑顔で迎える。
清光、安定くん、貞ちゃん、岩融さん、鶴丸さん。それに…
「伽羅っ!お帰りなさい」
私は大好きな愛刀の姿を見つけて駆け寄る。
「あぁ。ただいま」
ぽんっと私の頭に大きな手を乗せて、優しく撫でてくれる伽羅に自然と口元がほころぶ。
「主〜!今夜は俺たちの慰労会をしてくれるんでしょ?」
「もちろんっ!燭台切さんと歌仙さんがご馳走の準備してくれてるよ」
「宴か!こりゃ楽しみだ!」
「がはははっ!主よ!今宵は飲み明かそうぞ!」
「はいっ!伽羅も行こう?」
「あぁ。」
私は伽羅の手をぎゅっと握って宴の準備が整う広間へと向かった。
「ねぇ!大倶利伽羅!今日ぐらいは主を独り占めしないでよねっ!」
「そうだよ〜!僕たちが帰ってきたんだから久しぶりに一緒に飲もっ!」
「わっ!ちょっと二振ともっ…」
伽羅の隣で食事を楽しんでいた私は清光と安定くんに捕まってしまい、ぐいっと伽羅から引き離されてしまった。
ため息混じりに苦笑する伽羅に「ごめん」と目で訴える。
「ふぅ…身体が熱い…。」
そのまま二振に付き合わされ、やっと解放された私は火照る顔を両手で抑えながら、廊下へと出た。