第17章 燭台切光忠 伊達男に身も心も奪われて・:*+.
敵の一撃は重く、吉光の踏ん張る脚を少しずつ後退させていく。
「吉光!」
刹那、走り込んできた大倶利伽羅に合わせて、空中で身体を回転させ、敵の視覚を撹乱する。
「僕の刃は牛ほど大きな白狐でさえ貫く!…二刀開眼!!」
その軽い身のこなしはまるで空を舞う蝶のように美しい。
「伽羅ちゃん!背中は任せたよ?」
「なれ合うつもりはない。」
敵に囲まれた燭台切と背中を合わせる大倶利伽羅。
敵は間合いを取りつつ、じりじりとにじり寄ってくるが、二振の見事な練撃は敵の激しい攻撃をものともしない。
突如、闇から現れし敵の高速槍が大倶利伽羅の右肩に、燭台切光忠の左脚に深く斬り込む。
「っ!どこで死ぬかは俺が決める…お前なんかじゃない!!」
「やられっぱなしで活躍できないんじゃ、立つ瀬がないよねえ!」
二振が振りあげた刀の切っ先に美しい月の光が反射し、敵を真っ二つに切り裂いた。
「みっちゃん、伽羅!待たせた!」
「援護は僕に任せて!」
そこに彗星の如く加わる伊達組二振。
戦いは激しさを増し、ついに残るは荒ぶる無双の敵十振。
「さぁ。最後は伊達組みんなでかっこよく決めようか!」
伊達組四振の華麗な刀捌きに、圧倒された時間遡行軍が一振また一振と力を失い闇に消えていく。
全ての敵を討伐し、空を見上げた四振の目には、暗闇から明けた温かい東雲色の空が広がっていた。
「おい!月弎郎無事か?!」
「政宗さま!ご無事で何よりです。」
「お前たちのお陰でこっちの被害は最小限で済んだ。俺たちはこのまま出発す…って…お前たちぼろぼろだな?」
くくっと笑う政宗公につられて、四振も顔をほころばせ笑う。
「…でも。最高にかっこよかったぜ?ありがとうな。お前たちの事は絶対に忘れない。…またな!」
颯爽と駆けていくその背中を四振はそれぞれの想いを胸に見送った。