第3章 肥前忠広 ドSな彼と甘美な夜・:*+.
「疲れてねぇか?」
「肥前さんは優しいですね。ありがとうございます。」
主の頭を優しく撫でると、透き通った瞳に見つめられて、心臓がドクッと跳ねた。
「俺、お前が主で良かった。」
「えっ?」
「さっき俺を特別な刀剣って言ってくれた時…嬉しかった」
自分でもなんでこんな素直な言葉が出てきたのか分からない。
ただ主の笑顔が見たくて、俺を見つめてほしくて…
あっ…そうか。分かった。
「俺、お前が好きだ」
ゴロゴロ…ドカンっ!!
次の瞬間、雷鳴が轟き、視界が真っ暗になる。
なんだ?!雷が落ちたのか⁈
会場の電気が切え、パニックになった審神者達が一斉にバルコニーに押し寄せる。
「おい!いろは⁈どうした?」
視線を戻すと、震えながらへなへなと蹲るいろは。
「私…かっ、雷が苦手で…」
「大丈夫だ。落ち着け。俺がついてる」
震えるいろはを抱き寄せ、背中を優しく撫でる。
「みなさん落ち着いて下さい。先ほどこの屋敷付近に雷が落ちた模様です。」
会場がパニックになる中、政府の役員達が拡声機で説明を始める。
「なお大変申し訳ありませんが、電力の復旧の目処が立っておらず、磁波が不安定な状態ですので、時空移転装置が使えません。
皆様にはこの屋敷の部屋を準備いたしますので、ご理解のほどよろしくお願いします」
俺たちは顔を見合わせる。
…本丸に帰れない!!
꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧
ガチャ…。
俺たちに準備されたシングルの部屋に足を踏み入れる。
「お前、ベット使え。俺はソファーで寝る。」
俺はソファーに腰を下ろす。
部屋は小さなランプしかないため薄暗く、窓に打ち付ける雨の音が耳に響く。
「あのっ…さっきはありがとうございます。雷の時、側にいてくれて…」
「もう大丈夫か?まだ雷鳴ってるし、ここにいるから怖かったら言えよ。」
「あっ、あの。さっきの話…肥前さんが私を…私のことを…その…」
「好きだよ。」
「っ…」
「好きだ。」
俺はソファーを立ち上がり、ベッドに座るいろはの顎をぐいっと持ち上げ、その揺れる瞳を見つめる。
「私…も…」
「あっ?」
「私も肥前さんの事がずっと気になってて…仲良くなりたくて、話したくて、側にいたくて…他の刀剣にはこんなこと感じた事なくて」