第3章 肥前忠広 ドSな彼と甘美な夜・:*+.
「そっ…そんなんじゃねーよ!俺は…」
「主が君の事を心から考えていつも側にいてくれたこと、心に寄り添ってくれたこと、本当は嬉しかったんじゃないのかい?」
「俺は…嬉しくなんて…」
「肥前さん、準備できましたかー?」
その時外から俺を優しく呼ぶ声がして、はっとする。
「いってらっしゃい。…素直になりなよ?」
ぽんっと俺の肩を軽く叩いて、立ち去る燭台切。
開け放たれた扉から外にいた主の姿を見た瞬間…よく分からない感情が心に宿った。
栗色の長い髪は一つに結われ、華やかな鈴蘭の着物を身に纏い、ふわっと笑う主。
言葉を発することも出来ず、ただただぼーっと見つめてしまう。
「肥前さん?行きましょうか?」
「っ!おう…」
交流会に向かうための小型時空移転装置を持った主が、ぎゅっと俺の手を握る。
「離れないでくださいね?」
そう笑いかける主の柔らかい手が、俺の指に絡められた瞬間、身体が熱くなり鼓動がどくどくと高鳴る。
…やっぱり俺おかしい。
交流会は大きな洋館で開催され、そこには今まで見たことのない数の審神者と刀剣達が集まっていた。
「あら?いろはさんじゃない?」
「こんにちは。お久しぶりです。」
「あなたの本丸、ちょっとは刀剣が増えたの?今回は新しく仲間入りした刀剣って条件なのに…まさか肥前忠広とはねぇ。しかも脇差だし…」
なんだこの女?馬鹿にしてんのか?
刀剣を自慢の道具にしか思ってねぇのかよ…
苛立ち始める俺に気づき、主が落ち着かせるようにぎゅっと俺の手を握る。
「私にとって肥前さんは特別な刀剣なんです。とっても強くて頼りになるんですよ?」
"強くて頼りになる"…"特別な刀"…。
その言葉を聞いてなぜか心が浮き立ち、口元が緩むのをとっさに手で隠す。
主の一言でこんなにも心が温かくなる…。
この気持ちの正体は何だ?
「あらそう。」
女審神者がつまらなさそうに立ち去った後も、ひっきりなしに声を掛けられる主。
男審神者が数人、連絡先を書いた紙を渡しに来たが、イライラした俺はその場ですべて破いてやった。
「おい。お前ちょっと休め。」
主の腕を引っ張りバルコニーに連れ出す。
「審神者ってろくな奴いねーな。自分のことばっか自慢して、嫌味言い合って。」
「交流会ってそういう場ですからね。私も正直苦手です。」
困ったように笑う主に自然に手が伸びる。