第17章 燭台切光忠 伊達男に身も心も奪われて・:*+.
「あいつとは身分が違うだろ?お前とは生きる世界が違う。」
まるで私とみっちゃんの本当の関係性について言われているようで、胸がズキっと痛む。
私は人間で、みっちゃんは付喪神。
人間の時間は、彼にとっては長い歴史のほんの一瞬でしかない。
この先も老いていく自分と、老いることのない彼は何度も壁にぶつかるだろう。
人間を愛した方が良かったと後悔するかもしれない。
それでも私は彼と出会わない幸せな人生より、彼と出会う辛い人生を選ぶ。
そして願う。私が永遠の眠りにつく時、彼の中で私という存在が"幸せの記憶"として残るように。
「分かっています。私と彼は生きる世界が違う。それでも…私の短い人生、彼と共に生きていきたいと思います。」
「お前がそこまで惚れ込むぐらいいい男なのか?あいつは」
「はいっ!」
私はとびっきりの笑顔で政宗公に微笑む。
「その笑顔を向けられる相手が俺であってほしかったな。…まぁ。俺はまだ諦めないぜ?」
「えっ?でも私の気持ちは絶対に変わりませんっ!」
「そんなの分からないだろ?明日は俺を好きになるかもしれねぇしな」
政宗公はにっと笑うと、私の頬にちゅっと口付ける。
「…な?!ちょっ!」
「これ。忘れ物だぞ?俺が選んでやったんだから大切にしろよ?」
そう言いながら、私の髪に藤の髪留めをつけてくれる政宗公の優しさに心が温まる。
みっちゃんの前の主様は本当に素敵な方だ。
みっちゃんが彼から受けた影響は数知れないだろう。
そして私がそんなみっちゃんから受ける影響も大きい。
私もいつかなりたいな…刀剣達に信頼され、慕ってもらえる主に。
「政宗さま…私もいつか貴方のようになりたいです。政宗さまにお会いできた事…本当に光栄です。」
私は敬慕と感謝の気持ちで溢れそうになる涙を必死に堪え、その場を後にした。
「俺がこんなに必死になった女はお前が初めてだよ…。」
残された政宗はぐっと拳を握りしめ、夜空を見上げてそっと囁いた。
「いろはちゃん…どこに行っていたの!?」
廊下で私を見つけたみっちゃんは焦ったように駆け寄る。
「みっちゃん!勝手に出かけてごめんね。裏庭を散歩してたんだ。」
「あぁ。あそこか…。あそこにいろはちゃんを連れて行くなんて、政宗公はよっぽど君に夢中なんだね…」
みっちゃんは瞳に暗い影を落とす。