第17章 燭台切光忠 伊達男に身も心も奪われて・:*+.
「えっと…」
「さっきから心此処にあらずだからな。今は何も考えず俺との時間を楽しめよ?その後ちゃんとお前の心配事を一緒に解決してやる。」
私の心を読んだかのような言葉が胸に溶け込む。
政宗公は危険だ…この人は魅力的すぎる。
誰もがきっと彼に恋をしてしまう。
みっちゃんに早く会わなきゃ…!
私はなぜか不安になる胸をぎゅっと押さえる。
「これなんかどうだ?藤の装飾がお前によく合う。」
「は…はい。とても素敵です」
「こっちに来いよ。俺が付けてやる」
政宗さまは私の髪を柔く結うと藤の髪留めを器用に付けて、鏡を渡してくれる。
「やっぱりお前によく似合うな!すごく綺麗だ。これを包んでくれ。」
政宗公は蕩けるような甘い笑顔で頷くと、亭主に髪留めを手渡す。
「かしこまりました。政宗さま。前回御所望でした牡丹柄の反物が入っておりまして…」
政宗さまは「ちょっと待っててくれ」と微笑み、亭主と奥に入っていく。
「お嬢さんは"伊達男"という言葉を知ってるかい?」
店内を見て回っていると、和裁士に声をかけられる。
「初めて聞きました。」
「"人目を引くほどの粋な身なりをした男"という意味で、政宗さまを慕う者達が広めた言葉なんだ。」
「確かに…政宗さまは素敵ですね」
いつもオシャレなみっちゃんを思い浮かべ、ふふっと顔をほころばせる。
「そうだろう?政宗さまは戦国武将随一の色男だ。そんな彼から髪留めを贈られる貴方は、よほど彼の心を奪ったようだね。」
「いえ…そんなっ…。」
和裁士の言葉に動揺し、目を泳がせた私は店の外に一番会いたい人の姿を見つけて、店を飛び出す。
「みっちゃん!!」
「いろはちゃん!?どこにいたの!?すごく心配したんだよ!」
「みっちゃん心配かけてごめんなさい!実は…私、城下町で政宗公にお会いして…」
「!!」
みっちゃんはあまりの衝撃に言葉を失う。
「いろは!急にいなくなるからびっくりしただろ!」
「政宗さま?!」
「っ!」
私を追って店を出た政宗公が、肩をぐっと掴む。
向かい合ったみっちゃんと政宗公を見て、私は息が苦しくなるほどの動悸に襲われる。
「おい。いろは、こいつ誰だ?」
「彼は…えっと…私の…」
「私は月弎郎と申します。お嬢様の付き人と護衛をしております。」
みっちゃんは緊張で動けなくなった私を庇うように、言葉を紡いでくれる。