第17章 燭台切光忠 伊達男に身も心も奪われて・:*+.
「うーん。男らしくて豪快で…人を惹きつける魅力的な方かな。彼の周りにはいつも彼を慕う人達でいっぱいだった。それにすごくお洒落だったよ」
「ふふ。少しみっちゃんに似てるね」
「そうかな?彼への憧れがとても強くて、僕が真似しているだけかもしれないね」
照れたように笑うみっちゃんからは政宗公への尊敬の念がひしひしと伝わってくる。
「…っ!今時空がっ!!」
突如、不気味なほど辺りが暗くなり、空に青い稲妻が走る。
「っ!いろはちゃんはここにいて!黒川城の様子を見てくる!」
「分かった!みっちゃん気をつけて!」
みっちゃんは颯爽と民家の屋根に登り、城に向かって駆け出す。
ガッシャーン!!
みっちゃんの背中を見送った直後、目の前の煮売り茶屋から怒号が響き渡った。
「すいません!どうかご勘弁を!」
「あぁ?聞こえねぇなぁ?着物が汚れちまっただろうが!!」
よく目を凝らしてみると、喚く男の着物には料理を溢したような染みがある。
「おーい。まぁ落ち着けって。話せば分かるだろ?お気に入りの着物が汚れちまったなら、俺が新しい着物を見繕ってやるよ!」
その時、店の主人と男達の間に一人の男性が雄渾と歩み出る。
左目に眼帯をして人懐っこい笑みを浮かべるその男性は荒ぶる男達を宥める。
あの男性…眼帯のせいか、なんだか雰囲気がみっちゃんに似てる。
「なんだてめぇ!?痛い目みたくなきゃ黙ってろ!!」
「ふぅ。穏便にすませたかったんだけどなぁ?」
眼帯の男性が抜刀するとその場の空気が変わる。
数人が一気に斬りかかり、彼を狙うが誰一人として彼の間合いに入ることさえできない。
私でも分かる。圧倒的に強い!
それにあの太刀筋…なぜかみっちゃんを思い起こさせる。
「えっ!?…危ないっ!!」
次の瞬間、卑怯な男が彼の背中に回り込むのが見えて私は咄嗟に男の前に飛び出した。
「…っ!」
男が振りかざした小刀が私の髪留めを擦り、髪がばさっと解ける。
「背中を狙うなんて卑怯です!」
「うるせぇ!女は引っ込んでろ!」
私は男に押し飛ばされて、そのまま地面に倒れ込む。
「おい?お前…俺を本気で怒らせちまったな?…覚悟しろ!」
眼帯の男性は倒れた私の姿を見ると、先ほどの人懐っこい雰囲気とは一転して、ぴりぴりと痛いぐらいの殺気を纏う。