第16章 へし切長谷部 聖なる夜は貴方に絶対服従・:*+.
口付けは徐々に深くなり、二人の吐息が絡み合う。
「主…止まれなくなりそうです」
「ふふ…。先に夕餉を食べに行きましょうか?」
俺たちは微笑み合い、手を握って食堂へと向かった。
食堂に着くと、燭台切と小竜景光が彼女の元に今日の夕餉を運んできた。
「主!今日は主の大好物ばかりを作ったんだ。きみの笑顔が見たくてね。喜んでくれたら嬉しいな!」
「わぁ〜全部すごく美味しそう!燭台切さん。ありがとうございます!」
「熱いから気をつけてね?フーフーしてあげようか?」
「もぅ…小竜さんからかわないでください!」
「ごめんごめん。きみがあまりにも可愛すぎて…。おっと!番犬を連れていたんだね」
くそっ!長船めっ!
この天然女たらしな奴らは特に要注意だ!
俺は彼女の肩に回された小竜景光の腕をぱぱっと払う。
「いろは。この後じじいに一杯付き合わんか?」
「主さま!この小狐の手作り稲荷寿司もありますぞ!」
なにっ!?次は三条か!!
こいつらは"爺さん"という親しみやすい距離感で彼女に近づこうとするずるい奴らだ。
まったく…彼女にかまって欲しい下心が見え見えだ。
「三日月さん、小狐丸さん!でも明日も朝早いですし…」
俺の様子を窺い、やんわりと断わろうとしてくれる彼女の優しさに心が温まる。
「主さま。実は私…本日誉をいただいたのです。もし主さまが褒美にこの小狐と酒を酌み交わしてくださると欣幸の至りでございます。」
なっ!狐めっ!!
彼女の優しさにつけ込む気かっ!
俺は気が気でなく食事がうまく喉を通らない。
「誉のご褒美は大切ですね。じゃあ…一杯だけ」
「はははっ。決まりだな。さぁ行こう」
主〜!!!!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!彼女が俺以外の刀剣と、俺がいない場所で酒を飲むなんて絶対に嫌だ!!
俺は三日月に手を引かれる彼女を希求の意を込めて見つめる。
「少しだけ行ってくるので、長谷部さんは先に部屋で休んでいてください」
「俺も…行ってはだめですか?」
俺はとっさに彼女の腕をぎゅっと掴む。
自分でも恥ずかしくなるほど、弱々しい行動に痛みさえ覚える。
「寝支度を整えたら、長谷部さんの部屋に行くので…待っていてくれませんか?」
困ったように笑う彼女の瞳に映る俺は、今にも飼い主に捨てられそうな犬のような表情をしている。
「貴方が待てというのなら、いつまでも…」