第16章 へし切長谷部 聖なる夜は貴方に絶対服従・:*+.
「そんな事もあったね。でもそれだけ一途に想ってくれてる事は…嬉しいよ?」
ふふっと優しく笑う主の声に、地獄から一気に天国にいるようなふわふわとした夢心地になる。
「まぁ…主が気にしてないならいいけどさ。何かあったら俺にちゃんと相談してよ?」
「うん!清光ありがとう!」
「もう主は本当可愛いなぁ…。あっ!この指の爪紅が剥がれちゃってるよ!俺が直してあげ…っ!」
俺はその瞬間勢いよくドアを開けて中に入り、主の手を握る加州を脇に押しやる。
「ちょっと長谷部!邪魔しないでよ!」
「加州!そろそろ内番に戻った方が良い。薬研が探していたぞ」
「分かったよ」と拗ねたように去っていく加州を鋭い瞳で見送り、主へと視線を移す。
「主…。俺の想いは少し強すぎるでしょうか?」
しばらく仕事に打ち込む主の横顔を眺めていたが、ふと一抹の不安を口に出してしまう。
「どうして急に?もしかして清光との会話聞いていましたか?」
「…はい。確かに自分でも抑制が効かないぐらいに貴方をお慕いしている自覚があります。」
「そんなにも想われて私は幸せ者ですね。私は長谷部さんのその真っ直ぐな気持ちが嬉しいですよ?」
「本当ですか?もし嫌になったなら言ってください。…俺は貴方に嫌われたら生きていけませんから」
俺は苦笑しながら、彼女を窺うように見つめる。
「もし嫌って言ったら…私から離れてしまうんですか?」
彼女は俺を試すように、ぎゅっと手を握ってくる。
その愛らしい仕草と甘えるような瞳に頭がくらくらする。
俺がどれだけ彼女に溺れているか分かっていて、意地悪な質問をする彼女はずるい。
「いいえ。貴方からは絶対離れません。…でも少し自制するよう努めます。貴方が望まれるのであれば…」
「だめです。ずっとそのままの長谷部さんでいてください」
甘く咎めるように微笑みながら、俺の頬を包む彼女から目が逸らせない。
俺の心を鷲掴みにして決して離してくれない。この心を支配され翻弄される毎日さえも愛しいと思ってしまう俺はかなり重症だ。
「っ!」
俺は彼女を引き寄せ、唇に優しく触れる。
「お願いですから…これ以上可愛くならないでください。…これ以上はもう心臓が持ちそうにありません」
「んっ…あっ…長谷部さ…っ…!」
顔を少し赤らめ、小さな手で俺の服をぎゅっと握る彼女に何度も何度も口付ける。