第16章 へし切長谷部 聖なる夜は貴方に絶対服従・:*+.
「寒いな…」
空を見上げた俺の頬に冷たい雪が舞い落ちる。
「早く主を探さないと」
俺は廊下を足速に歩きながら、彼女の姿を必死に探す。
ふと庭に目をやると、一面の銀世界に舞い降りた天女が空を見上げて立っている。
主っ!!なんて綺麗なんだ…。
いや…それよりも!
あんな薄着だと風邪を引いてしまわれる!
「主!こんな寒い中、庭にいらっしゃったのですか!?」
「わっ!長谷部さんっ!」
俺は急いで彼女に駆け寄り、暖かいブランケットでその小さな身体をすっぽりと包む。
「部屋にいらっしゃらないので、ずっと探していたんですよ」
「ふふ…ありがとうございます。こうするともっとあったかいですね」
「っ!」
彼女は俺にぎゅっと抱きつく。
その行動が可愛すぎて、愛しくてたまらない。
あぁ…俺はもう幸せすぎて死んでしまうのではないだろうか。
「私がいなくて寂しかったですか?」
まん丸な愛らしい瞳で悪戯っぽく笑う彼女。
「っ!あぁ…貴方って人は本当に…」
どれだけ俺を溺れさせてしまわれるのだろう。
愛執の念が心の奥底から湧き上がり、隠しきれずに溢れ出す。
「長谷部さん?」
俺を覗き込む彼女の肩を優しく掴み、誠心誠意の想いを伝える。
「主…心からお慕い申しております。」
「私も長谷部さんが大好きです。」
少しはにかみながら俺の気持ちに応えてくれる彼女に、俺は今日もどうしようもなく恋をしている。
「さぁ。部屋に戻りましょう。」
身体が冷えた彼女に温かいお茶の用意をして、部屋へと戻ってきた俺は、ふと聞こえてきた加州と彼女の会話が気になって、廊下で聞き耳をたてる。
「本当、長谷部って主のストーカーだよね」
「えっ!清光…そんな言い方ひどいよ!」
「だってさ。常に主の居場所を知りたがるし、主の行動を把握したがるし、他の刀剣と話してると嫉妬するし…」
むっ!加州め…!
暇さえあれば彼女の部屋に入り浸る初期刀…。
彼女に俺の事を悪く言うなんて…後で覚えておけよ!
「そうかなぁ?私の前では普通だよ?」
「主が気付いてないだけだよ!長谷部が修行に行った時もさ…一日に五通も手紙が送られてきたよね。ちょっと怖いよ!」