第3章 肥前忠広 ドSな彼と甘美な夜・:*+.
「ありがとうー!みっちゃんの料理楽しみだなぁ。ねっ?肥前さん」
「俺は部屋に戻る」
「え?みんなで一緒に昼餉食べましょうよ」
「いい。後で1人で食う。」
「あっ…」
肥前が去っていく後ろ姿をいろはは寂しそうに見つめた。
ー数時間後。
部屋に戻った俺は少し休んでから、台所に向かった。
台所に差し掛かかったところで、主と燭台切の会話が聞こえてきて、足を止める。
「主、大丈夫かい?…肥前くんの事だけど、なかなかうまくいっていない気がしてね。少し心配なんだよ。」
「みっちゃん…心配かけてごめんね。肥前さんと仲良くなりたくて頑張ってるんだけど、なかなか受け入れてもらえないみたいで…」
困ったように笑う主の声は少し震えている。
「正直…彼はああいうスタイルなんだから、無理して近づく必要はないんじゃないかな?君がそんなふうに寂しく笑う顔は見たくないよ。」
「…あのね。肥前さんはいつも"俺は敵を切るためだけに存在する"って言ってるけど、たまにすごく悲しくて虚しいような顔をするの。まるで自分の本当の存在意義を探しているように…。だから私は彼にこの本丸で居場所を見つけて、仲間と打ち解けて自分の存在意義を見つけてほしいなって思ったの。」
なんだよそれ…なんでそんな…っ…!!
主の気持ちを聞いた俺はぐっと拳を握りしめ、自室へと駆け出す。
「その気持ちは分かったけど、主はどうしてそこまで肥前くんに拘るんだい?」
「えっ…と。うーん、なんだか放って置けなくて…気になっちゃうの。」
「それは審神者として?それともいろはちゃん個人としてかな?」
「っ…みっちゃん?どうしたの?そんなに意地悪な聞き方…いつもしないのに…」
燭台切の執拗に攻めるような問いかけに、驚きを隠せず困惑した瞳で見つめるいろは。
「ごめんごめん。あっ!そろそろ任務に戻る時間だよ?午後からも頑張ってね!」
燭台切はふっと微笑み、とっさに感情を隠す。
「うん…行ってきます!」
少し戸惑いながらも笑顔で去っていくいろはの姿を見送り、「嫉妬なんてカッコ悪いな…」と苦笑しながら天井を見上げた。