第15章 鶴丸国永 君に恍惚な驚きを…・:*+.
「あぁ…たぶんその域だろうな…。日に日に感情が増して歯止めが効かない。いろはが自分の知らない世界に行って、知らない誰かと出会うのを恐れてる」
「…嫉心か?」
「情けないよな…。いい歳した爺さんがこんなにも振り回されてる」
「それほどの魅力を持つ唯一無二の女子(おなご)なのだろう?我が主は。ならば愛惜の情を持つのは仕方あるまい」
三日月はふっと柔らかく笑う。
「あぁ。そうだな…。千年待ってようやく会えた。…本当にいろはは特別だ。」
「…明日はいろはに背中を流してもらうとするか」
「おいっ!爺さん!」
「はははっ。今宵は三日月が綺麗だな」
三日月の言葉で心のもやが晴れた鶴丸は、いろはの寝室に戻り、ぐっすり眠る彼女を抱きしめて共に深い眠りに落ちた。
ー審神者会議当日。
「っ!君…その格好!!」
「鶴丸さんどうですか?似合っていますか?」
私はベージュのニットにネイビーのスカートを合わせた洋服に身を包み、鶴丸さんと向かい合う。
「あぁ…驚いた!…綺麗だ。」
「ありがとうございます。今から向かう時代は着物より西洋の服の方が主流なので…。」
「髪も下ろして行くんだな。」
鶴丸さんは緩く編み込んでハーフアップにした髪の毛を掬って優しく撫でる。
「何もかも…いつもと違うな…」
「え?」
「いや。気をつけて行ってくるんだぞ」
鶴丸は寂しげに呟いた言葉を誤魔化すように笑顔でいろはを見送る。
「主さん本当にかわいい!行ってらっしゃい!」
「お土産待ってるからね〜!早く戻ってきてね!」
「寂しくなんて…ない」
その後すべての刀剣達が審神者部屋に集まり、笑顔で見送られたいろはは「行ってきます!」と笑顔で令和へ出発した。
「あー!主さん会議の予定表忘れて行っちゃった」
「まぁ…大丈夫だろ。一人じゃないしな」
「そうだね。早く帰ってこないかなぁ…」
「乱…大将はさっき出て行ったところだぞ?」
「へへ…だって寂しいんだもん」
審神者部屋で会話する刀剣達を横目に見ながら、鶴丸は縁側に大の字に寝そべる。
「ちょっと鶴丸!邪魔なんだけど!」
「加州〜。邪魔はひどいなぁ」
「ほら!起き上がって!もぅ…」
「やれやれ、退屈で死んでしまいそうだぜ…」
「主がいないから退屈なんでしょ?」
加州が苦笑しながら、鶴丸を見る。