第4章 止められない感情
優しく微笑みかけてくる兄に私は照れながら上目遣いで見上げ小さく頷く。
兄妹のような眼差しではなく誰がどう見ても恋人同士のような雰囲気を醸し出すと、
私達の姿を目の当たりにした橘は目を細めながら仲がいいんですね。と告げてきた。
「えぇ。柚は俺にとって大事な人ですから」
兄がそうきっぱりと言い切れば、
橘の目の奥にある闘争心が大きく揺らいだ。
「まるで恋人同士のようです。これじゃ、俺は敵わないな…」
「え?」
「お兄さんを目の前にしてお恥ずかしいんですが、実は俺神崎に以前告白してるんです」
苦笑いをしながらポロリと零した言葉に兄が聞き返すと、
今度は照れた表情で嘘をついてきた橘。
「橘、何言って…!」
「あ、でも断られたんで。振られました。好きな人がいるからって」
堪らず私が乗り出すと、
あははと屈託のない笑顔を浮かべながら頭をポリポリと掻いている。
「そうですか」
兄が複雑な表情で呟くと、橘は再び兄に対して牙を向けた。
「まさか…好きな相手ってお兄さん、じゃないですよね」
その言葉に私はドキッ!と胸が大きく鼓動した。
当然橘は私達の関係を知っていて聞いているわけだから、
逆に返せば兄にカマをかけているような状況だ。