第4章 止められない感情
その時だった。
神崎と背後から呼ばれた私はそのまま後ろへ振り返る。
そこには橘の姿があったのだ。
「橘…君」
「もしかしてって思ったけどやっぱりそうだ」
その顔を見た時ドクンッ!と胸が大きく鼓動した。
つい数日前も学校で無理矢理犯されたばかり。
兄との関係を脅迫しながら半ばレイプのような強引なセックス。
しかし無情にも私の体は感じていた。
嫌なはずなのに、橘を受け入れてしまう現実。
-----こんな場所で会うなんて最悪だ…。
「友達か?柚」
兄が私の顔を覗き込みながら問いかければ、
ハッと現実に戻され、慌てて返事を返す。
「うん、私と同じクラスのーーー」
「橘です。いつも神崎にはお世話になってます」
私が紹介しようとした時、橘はスッと兄に手を差し出し自ら紹介し始めた。
ニッコリ笑った顔は誰もが人懐っこい人柄を想像するであろう。
裏と表の使い分けを誰よりも知っている私は背筋が凍る思いだ。
「柚の兄の俊哉です。いつも妹がお世話になっています」
何も知らない兄は当然手を差し伸べ、二人は硬い握手を交わす。
「神崎にはいつも助けてもらってるんです。な?」
橘が流し目で私を見つめ問いかける。
気まずい私は俯きながら小さく頷いた。
そんな簡単な言葉で済まされない程、
橘に体を食い荒らされてる事を言えるはずもない。
「そうなのか。あまり学校の事を離さないんでね。上手くやっているみたいならよかった
クスと笑った兄は握手した手で私の肩を優しく抱いた。