第1章 理想のペアとハムちゃんズ
「何だ、ケンカか?」
「そういうわけではありません」
「じゃあ、どういうわけなんだ?」
タイショーに聞かれ、木手は困ったような表情で微笑し、答えます。
このとき、木手は丸井とダブルスを組んで高校生の遠野と君島ペアと戦ったときの丸井の姿を思い出していました。
「人間関係は大概、大丈夫ですが、彼のことになるとオレ自身のペースが狂わされるときがありますね。今のように」
「よく分からないが、あんたが相手のことをだいぶ気になっていないとペースが狂うっていうのはないんじゃないのか」
「ふっ、オレが彼を気にしているからこそ、こうして別々に行動になったとあなたは言いたいわけですか」
「ああ、そうじゃなかったら、あんたは相手のことが嫌いになったのか?」
「……いいえ」
「なら、さっさと相手のところに戻って仲直りしな」
「だから、丸井くんとはケンカをしたわけでは……。あなたと話していたら、今こうして彼と別々に行動しているオレが馬鹿馬鹿しくなってきました。戻る前に2つ聞きましょう」
「何だ?」
タイショーは目をぱちぱちさせ、木手の問いを待ちました。