第1章 Look【リドル・ローズハート】
ことあるごとに話題になる例の監督生ユウ。
異世界人というだけで注目の的なのに男子校唯一の女子生徒(おまけに変な魔獣付き)ときたらそりゃもう色んな意味で目立ちまくる。
魔力を持たない身でありながら名門魔法士学校に通っている彼女を良く思わない生徒もいる一方、物をはっきり言うさばさばした性格の彼女を気に入っている者も多い。
現にハーツラビュル寮1年生のエース、デュースとは特に仲が良く、常に行動を共にしている。どうやら入学直後に「シャンデリアぶっ壊し事件」と今でも噂される事件を起こした際に一悶着あったらしい。
まあ、噂の生徒がハーツラビュル寮生だと知ったときの寮長といったら眼力で人を殺しそうなぶち切れようだったので思い出したくもないが。
しかし、リドルだって監督生と一悶着あった末に親睦を深めた1人である。
彼がハーツラビュル寮に就任してからというもの、長らく寮生を苦しめていた圧政。ルールに厳しいといえば聞こえは良いが、それは決して褒められたものでは無く、実質は彼の価値観を理不尽に寮生に押しつけていただけだった。
彼の幼なじみであるトレイ先輩でさえも口出しできなかった彼の圧政を止めたのはほかでもない監督生率いる1年生3人組。
幼いころのトラウマに捕らわれ続けていたリドルの妄信を見事解き放ったのだ。
そこに至るまでリドルが闇落ちバーサーカー化したり、自慢の庭が大荒れしたり、エースがリドルを殴ったり・・一筋縄では語れない一悶着どころか十悶着があったわけだが。
結果として、リドルの圧政は緩和され、彼自身もいくらか楽に生きれているような気がする。もちろん、ハーツラビュル寮だって良い方向に。
あいかわらずルールには厳しいリドルだが、理不尽なルールの強要は無くなったわけで。ハーツラビュル寮生の中には監督生をヒーロー同然に扱う者までいるほど、彼女の活躍ぶりは輝かしかった。
では、まさしく救われた張本人であるリドルが彼女に抱く感情は何か。
感謝?
友愛?
そんなの、愚問。
闇の中から救い出してくれたヒーローに対して抱くものは・・・・限りなく憧れに近い恋情。