第1章 Look【リドル・ローズハート】
自分の気持ちにどう折り合いをつけるべきか。寮長として、立場のある者として身勝手な行動は慎むべきであり、つまりそう考えるとまずは噂を否定したうえでユウにも謝罪と弁解を・・、
うんうん唸りながら食堂へと歩を進めるリドル。
見るからに小難しいことを考えていそうな険しい顔のリドルにちゃちゃをいれる猛者は当然いるはずもないため、3人はひそひそ噂されつつもすんなり食堂に着いた。
いまだ考えることに夢中で食事をとりに行く気配の全くないリドルに配慮し、先に席を取っておこうと見渡していた矢先。
「寮長ならきっと____」
「あ、ユウくんめっちゃうけることしてる」
さっとスマホを構えるケイト。
スマホのカメラが向けられている方を見て、トレイが笑い出し、ユウの名前につられたリドルがそれを見て、妙なものまねが本人に披露されてしまうという悲劇が起きた。
「・・・何をやってるんだあの子」
「お?なんだ、リドル。お咎めはなしか?」
「ふん、今からするんだよ。今日の朝食はぜひ彼と一緒にいただくとしよう」
「へえ、今から・・か」
「なんだい?言いたいことがあるならさっさとお言い」
「いいや、何も」
「ふうん・・?それならいいけど」
噂する生徒たちのことも気にせず、ずんずんユウのところへ向かっていくリドルを数歩後ろからゆっくりついて行く2人。
トレイが先ほど言いかけた言葉はこう。
お咎めに行くには随分嬉しそうだな、と。
「リドル君、ちょう元気になったじゃん」
「ああ、本当だな」
トレイがお咎めはなしか、と聞いた理由。
何をしているんだと呆れたように呟いたリドルの顔は間違いなく微笑んでいたから。
ひとつ、2人の中に仮説がうまれた。
昨晩の態度といいこれといい、まさかリドルが好意を寄せるのは監督生ではなく…。
「なあ、ケイト。まさかとは思うんだが・・」
「・・多分俺も今おんなじこと考えてる。・・けど、やめとこ。少なくとも、リドルくんの口から聞くまでは」
「・・そう、だな。ありがとう」
ユウの真後ろに立ち、見るからに怒っていそうな怪しい笑みを浮かべるリドルは、いつも傍にいる2人からするとやはり穏やかなものに見えるのだった。