第1章 Look【リドル・ローズハート】
「で、どうなの?」
「どうって言われても・・監督生とは何も。どうにかなる程関わってもいないだろ」
にしても、寮長はたったあの一言で取り乱し変な噂を流させてしまうほど、監督生に夢中らしい。
私が好きなのは寮長であって、私にとっての恋敵が監督生なのに、寮長の恋敵が私になるとは滑稽なものである。私が好きなのは貴方なんですが、と声を大にして言ってやりたい。
言えるはずもないのだが。
別の意味で学園中の噂だ。ユウが男好き(物理)だったって。
いやだな、想像したら鳥肌ものだ。違うそうじゃないってなる未来が見える。
「まあ、そりゃあそうか。つまんねえの、寮長と監督生をかけて決闘とか想像したのに」
「首はねられて終わるわ」
「それ言ったらあの人になんて誰も勝てねえよ」
「首はねてからきっとこう言うよ、”やっぱり監督生の隣にふさわしいのは僕だ!”ってね」
「下手な声まねやめろよ、似てねえから」
「変な噂のもとは寮長でしょ?これくらい許して貰わなきゃ困るね。”僕は絶対、絶対監督生に選ばれるんだ!!”とか?」
「お前それ聞かれたら絶対怒られ・・・・・、」
食べることより話すことに夢中らしい友人と食堂内を軽く見渡しながら談笑を楽しむが、ちらちらとこちらを見る者、声を潜め噂話をする者、エトセトラ。
ふむ、やっぱり私と奥の方にいる監督生が注目の的。
これから先どうするか。まずは監督生に訂正をいれ・・と考えていてふと気づく。
食堂がザワつきだしたと同時に彼が、友人が私の後ろを見て黙ってしまった。引き攣った口元を小さく動かして___
う・し・ろ
「・・後ろに何が・・、まさか、寮長がいるなんてベタなこと言うんじゃ・・」
「やあ、ベタな登場で悪かったね」
「まじか」
ええ、本当に。ベタ中のベタですよ。
まさか寮長がいるなんてベタなことないでしょうと言おうとしたら、いた。
にっこり。
怖いくらい笑顔の寮長と笑いをこらえるトレイ先輩。ケイト先輩に至ってはスマホを構えているので間違いなく私のおかしなモノマネはマジカメ行きだろう。死んだ。