第1章 Look【リドル・ローズハート】
「・・とにかく!ユウと監督生を一緒にするのは許さない!」
どっとザワつく談話室。目を丸くするトレイとケイト。
いかなる時も正しい道を進むリドル。その場の最善を探し出し、最も自分の望む結果を得る道を作り出すリドル。
ではここで今の発言を振り返ろう。
ユウと監督生を一緒にするのは許さない。
・・どう考えてもやらかしている。これはもう、恋とか愛に疎いリドルでも周りにどう捉えられるかすぐに察した。
後悔しても時すでに遅し。あちこちで寮生が騒いでいるし、ケイトに至っては「リドルくんまじ・・?」とスマホ片手に瞳を輝かしている。待て、何する気だ。
「リドル、お前・・監督生のことが好きなのか・・?」
真っ青な自分とは対照的に血色の良い顔で前のめりのトレイ。どっからどう見ても幼なじみの浮いた話を楽しんでる。こういった話は笑ってスルーしてくれるタイプかと思っていたのにどうやら違ったらしい。流石ナイトレイブンカレッジ生。
リドルは違うと口を開きかけて_____そして閉じた。
「・・・ボクは自室に戻らせて貰う。ケイト、当番の割り振りは君に一任するよ。・・それじゃあ、お前達も早く戻るように。寝坊なんてしたら首をはねてしまうからね」
そのまま、先の発言には言及せず立ち去ったリドルに一層その場はざわめきたつ。
トレイとケイトは何かおかしいと顔を見合わせて首を捻ったが、寮長の浮いた話、もっといえば女子のいない男子校での浮いた話。勉学ばかりで鬱憤のたまった男子高生にとってリドルのそれは、無言の肯定と都合良く解釈するには十分だった。
あまり余計なことをしてやらないように、と当たり障りの無い副寮長の注意はあってないようなもの。
翌日、ナイトレイブンカレッジ中の朝食の席はとある噂でもちきりだった。
噂とは、本当に都合の良いものであり、受け取り手の面白おかしいように変容されていくものである。
あのルール人間が恋をした。
リドル・ローズハートのゴシップはナイトレイブンカレッジの娯楽として瞬く間に広まったのである。
余計な人を巻き込んで、より面白くなる方向に。