第21章 女としての痛み
一人で広い夜空を眺めながら、ただ空をふわふわとしていた。
だけど心にあるのはあのデブに殴られて、腫れあがった顔、首絞めでついた赤黒い痣、傷つけられた全身、汚い男に舐められてた恥部・・・。
屈辱的で、女として、いや、人としての尊厳さえきっと失くしてしまうだろう・・・
「…女として、幸せは…どこにあるんだろう」
今の私には強さがある。自分を守れる力がある。なのに何故こんなにも怯えているのだろう・・・。簡単な話だ。私にまだ人間としての感情が残っているからだ。
なんて考えていると背後から声が聞こえた。
「レミエル様、こんな所で御一人でいては危険です」
紳士的で綺麗な、心地の良いトーンで私をやんわり危惧する声の主の方を向くと微笑んで私を見ていた。
「ごめんなさいねデミウルゴス。どうしても一人になりたかったの」
「存じ上げております」
「…ジャックの奴…まぁいいわ」
「もし宜しければ貴女様のお顔を曇らせている原因を聞かせてはいただけませんか?」
「面白い話じゃないわよ」
「構いません。レミエル様のお言葉に下らないお話等一つも御座いません」
「ありがとう…。けど話すような事じゃないの。ただ、何故女は男にねじ伏せられる程弱い者なのだろうと」
「今のレミエル様には何者もねじ伏せる事が出来ます」
「確かに今の私にはその力があるけど、過去の私にはなかった。デミウルゴスにも、私が至高の一人じゃなかったら組み敷くことが出来る力を持っている」
「そんなことはっ!」
「あるよ。本気を出した貴方を相手にしたら私はきっとMP切れで組み敷くことは容易いでしょうね」
「・・・」
笑みが消え、黙り込んでしまったデミウルゴスを見て失言だったと思って瞳を閉じると、その間に彼は行動していた。
だって私は彼の腕の中にいたから。
「デ、ミ、」
「私がそのようなことを出来たとしても、私が貴女に牙を向くことはありません。これから先永遠に」
「…ありがとう。一つだけ、お願いしてもいい…」
「何なりと」
「貴方のぬくもりがわかるよう、強く抱きしめて」
「はい」
忠実に私の願いを聞き届け、体をぴったりとくっつけ、強く、けれど優しく私をぎゅっと抱きしめるデミウルゴスの腕の中で私は瞳を閉じた。