第5章 秘書の憂鬱
ーデミウルゴスsideー
各階層を巡り、一人一人に優しくお声掛けくださり、守護者に至っては触れていただけるという光栄なことをしておられた。
昨夜はアルベド、先程はシャルティア、マーレ、アウラ、プレアデス…。かの御方は本当にナザリックの華であり、偉大なる母である。
「ふぅ…デミウルゴス、護衛ご苦労、貴方も持ち場に戻っていいわよ」
「いえ、私の任は滞りなく済んでおります」
「…あぁ、そうね、確かに貴方は私と階層視察すれば職務を全うしていたのね」
「はい」
「デミウルゴス」
「いかがいたしましたか」
「ありがとう、貴方に補佐してもらってるととても落ち着くわ。モモンガさんの秘書なのに、デミウルゴスに補佐されてしまうなんて私もまだまだね」
なんと私には勿体なきお言葉…!そしてレミエル様のなんと謙虚な姿勢…。貴女の存在だけで私は、私たち守護者は至高の御方が去る中、モモンガ様を補佐され続けたナザリックの美しき至高の御方。貴女の存在一つで我らはこの忠誠を誓えるのです。
「勿体なきお言葉。ですがそんなことはありません!レミエル様がおられるからこそ我ら守護者は迷わず至高の御方に忠義を果たすことができるのです」
「ふふ、わかっているわ。だから私は、その忠義があるからこそ、我が子達を大切に思い、不安を抱かせることがないよう細心の注意を払い、最善の策を講じるのです」
ナザリックの者達を我が子と…、そこまで深い慈愛に満ちておられるのですか貴女は…。
「でも」
「何かご不満が?」
「不満ではないけど…たまには休ませてはほしいなぁってワガママはあるの、、だってモモンガさんたまに抜けている所があるんだもの」
先程の慈愛に満ちた瞳とは打って変わって、モモンガ様へ不満の色を瞳に滲ませていた。表情がころころと変わり、目を離せなくなる…。この気持ちは…。
「あ、これモモンガさんに言っちゃダメよ?言ったらお仕置きね!もちろん守護者にも話したらダメよ?」
「かしこまりました」
「絶対よ?モモンガさん結構凹んじゃうんだから!そのあとの機嫌取りだって疲れるんだから!」
見目からは思い付かない子供のように無邪気なお姿は私の目にはとても微笑ましく見えてしまった。ダメだ。私がかの御方にそのような感情を抱いては…。
ーデミウルゴスside終ー