第14章 音と霞
その後、お館様は改めて今回の事件の話をした。
「今回の事件に関しては、特に調査はしない。の死亡は実弥と天元が確認しているし、これ以上追う必要はない。残念だけど、鬼の被害として今回のことは終わらせる。」
少々雑な解決を不審に思ったが、お館様が決められたことだ。誰も文句は言わなかった。
「では、私から新たな柱の紹介をさせてもらう。入ってきていいよ。」
それからは矢継ぎ早に話が進んだ。
お館様に促されて入ってきたのは…地味な小さい、本当にただの子供だった。
「こんにちは」
無表情でペコリと頭を下げる。
ああ、俺も見覚えのある奴だ。
「新たに霞柱に就任した、時透無一郎だよ。」
「…どうも」
皆そこそこ顔と名前は知っていただろう。あの霧雨さんの継子だ。
「……師範は?」
しかし、次の瞬間に言った間抜けな台詞に全員が唖然とした。
「…ええと…どうしたんだっけ……どっかに行くって言ってたから、ここかと思ったんですけど」
「無一郎、君の師範はもういないよ」
「そうですか」
理解しているのかしないのか、ぽやんとした地味な顔はそのままだった。
「……」
部屋の中にいる誰の顔も見ようとせず、ただ部屋から見える空をぼんやりと見上げている様子に頼りなささえ感じた。
「では、これからはこの九人で鬼殺隊を支えてほしい。これからもよろしく頼むよ。」
その言葉に全員が…いや、時透以外が大きく返事をした。
時透はさっさと帰った。
…なんて愛想のないやつだ。……こういうところ、霧雨さんにそっくり…。
「なあ悲鳴嶼さん。」
「なんだ、宇髄。」
「どう思うよ。時透のこと。」
悲鳴嶼さんは眉間に皺を寄せた。
「まだ何もわからん」
「…ですよねー」
まあ、一瞬顔合わせに来ただけだし当たり前だな。