第14章 音と霞
霧雨さんの遺体が消えた。
俺はその報せを屋敷に駆け込んできた隠から聞いた時に驚いたどころではなかった。
「霞柱様の遺体を運んだ隠もろとも行方が知れません、しかし、鬼の目撃情報も特にありませんでした。」
「待て、あの人の腕と脚は。別で運んでいただろ?」
「それも…」
隠は首を横に振った。
「それから、霞柱様の屋敷のものも全て消えていました。」
「は…!?」
「屋敷には継子がまだいたようなのですが、その、鬼殺隊の任務のために留守にしていたと…。扉が破壊されていたので、おそらく窃盗だろと言われています。」
俺はまた忙しくなった。霧雨さんの屋敷に行くと、確かにそこはもぬけの殻だった。
「…嘘だろ」
あの人がいた形跡がどこにもない。
何もなくなっていた。
そして、その時を待っていたかのように緊急で柱合会議が開かれた。
主に、遺体や遺品が盗まれたことについては一切触れず、新たに柱が一人増えるとのことだった。
不自然なほど霧雨さんに触れないお館様に全員不信感のようなものを抱いていた。
「お館様」
「何かな」
その時、意外にも不死川が手を挙げた。
「俺は霞柱、霧雨の最後に立ち会いました。その時に話していたことをここで申し上げてもよろしいでしょうか。」
柱たちがざわつく。
その手には霧雨さんのものと思われる刀があった。
「いいよ。私も聞きたい。」
お館様の言葉を受け、不死川は話し始めた。
「あの人は伝えるべきことが伝わるようになっていると言っていました。何か、鬼殺隊に言葉をのこしていますよね。」
「…そうだね。遺書を…私は預かっている。」
その事実に皆驚いていた。
「…あの…でしたら、なぜそのことを隠されたいたのですか?」
「……みんなは、の遺書を見たいかい。あの子は、ここの誰かにあてた遺書は特に残していない。あの子が個人にあてた遺書は全て送り届けたし、私の手元に残っているのは特に宛先もないものだ。」
お館様のご子息が白い紙に包まれた手紙を持ってきた。どうやらあれが遺書らしい。