第11章 行かないでくれ
「その…昨日は本当に悪かった。」
昨日っていうか今日だけどね!!今日の朝の四時の話ね!!
「仕事終わって、ちょっと飲んで、スマホなくして、探してた…」
はいそれ何回も聞きました。そろそろ飽きてきました。
「んで、見つかったけど充電きれてて…」
もう何度目かわからないことを永遠と話し続ける実弥に私は心底あきれていたし怒っていた。
公衆電話使えばよかったじゃんとか、充電器買えばとか、そんなことを言うつもりにもならない。
「あのね、私は確かにこの同棲には前向きじゃなかった。」
私はもう怒りが爆発してついに本音をぶちまけた。
「一緒に暮らしている私を放っておいて飲みに行って挙句の果てにスマホ探してたなんて。」
私は声を低くして言った。
「家で一人の私よりスマホなんでしょ、あなたは!!」
「ちがっ!!」
「何なの!?本当にあんた私のこと好きなの!?」
「す、好きだって」
「言うのが遅い!!!!!」
私がやかましく叫ぶと実弥は困ったようだった。
「もう私出ていくからね!!」
そういうと、はじかれたように立ち上がって玄関の前に立ちふさがって慌てだした。
「出ていかないでくれよ!!俺が悪かったから!!」
「そんなの百も承知だよ!!!実弥が悪いの!!!だから出ていく!!!」
実弥は青ざめた顔のままパクパクと口を動かした。
こんなに怒るのは初めてだ。実弥もビックリしているのがわかる。普段喧嘩といっても、ここまで白熱しない。
「実弥のばか!!あほ!!あんぽんたん!!たんたんたぬき!!!クソ筋肉!!!!!」
「………!?」
実弥がポカンとしている。
「もう知らない!!好きなだけ飲み歩いてスマホ探せばいい!!!」
私が立ち上がってそっぽを向くと、すぐに後ろから抱きついてきた。