第11章 行かないでくれ
私は肘打ちで対抗したが……かってえなこいつの筋肉。全然きかないし何なら私の肘がすごく痛い。
「ごめん、もうしねェ。大好きだよ。だから出て行かないでくれ。」
そうしているうちに実弥が甘い言葉を囁くので、私はますます憤慨した。
「あー!そんなのにだまされません!!離せ!!お前力強いんだよ!!痛いしっ!!!!!」
ギャーギャー騒ぐも実弥は動かない。くそ筋肉がぁ…!!!びくともしないめっちゃ腹立つ!!筋肉なしひょろひょろ軟弱体質の私への嫌味か!?
「じゃあ」
実弥がぐっと腕に力を込める。
「痛くしねえから」
と思うとフワッと力が抜ける。チャンス!と思って振り払おうとするが、ガードがかたくて逃げられない。えちょっと待ってロックかかってるこれ痛くないけど辛いやつ。
「………同棲嫌だって言ってたから…お前が俺といるの嫌なんだと思ってたんだよ。」
すると突然そう言い出すので、私はぎょっとした。
「…その……だから…なるべく、なるべくお前と活動時間ずらそうと………」
そこからモゴモゴとして黙るので、私は思い切りジャンプしてやった。すると私の頭頂部が彼の顎にクリーンヒット。
「がっ!!ってえ!!!!!」
「はい脱出!!」
その隙にようやく離れることができた。
実弥は顎をおさえて悶絶している。
「一緒にいるのが嫌なら別れてるわこの筋肉ダルマッ!!!こういう口喧嘩増えるからやだったの!!!めんどくさいし叫ぶの疲れるし私の頭痛いしっ!!!」
最後のは自業自得だ。
けれどもう私、本当に怒ってて感情がおさえられない。
「でもあんたの気持ちはわかった!!だから出ていかない!!そう思わせてたなら私もごめん!!」
私が目を見て言うと、実弥はきょとんとしていた。
「ただし!!今度こんなことあったら頭突きじゃすまないよ!?あんたの部屋のCDとか雑誌とか全部粉々にしてやるから!!ボールペンとか小物も!!スーツだってビリビリにしちゃうかも!!」
「っ!!……ッ!?…!!!」
実弥は顎をおさえながらおっかなびっくり黙って頷いていた。
後日、実弥はあんなに怒る私が普通に怖かったらしく、なるべく怒らせないようにしよう…と誓ったのだとか。