第11章 行かないでくれ
飛び出したはいいものの行く当てもない。
がむしゃらに彼の行きそうな場所を探し回った。
職場の学校、飲み屋街……でも深夜のそこは明かりもついていなくて暗かった。
ブーツの隙間からすぐ雪が入ってきて、足が一気に冷えた。雪が髪の毛につもるので、時々はらった。手もかじかんで、頬もしもやけになって、ちょっとかゆい。
一時間ほど探したけれど、見つからなかった。
もしかしたら帰っているかもと思ってアパートに戻ったが、私が飛び出したあの部屋はあかりがついていなかった。
私は部屋のドアの前にずるずると座り込んだ
膝を抱えて、顔をうずめた。
ぐすん。
すぐにそんな音が聞こえた。
ああ、泣いちゃってどうするの。
もっと他に色々あるでしょ。警察とか、友達に手伝ってもらうとか。
ああもう、寒いんだ。寒いせいだ。
頭が働かないんだ。
もうすぐ四時になる。いくら帰りが遅いっていっても、こんなに遅くなるのはあり得ない。
雪に埋もれてしまったんだろうか。どこにいるのかな。
そう考えるほど涙が止まらなくて、足に力が入らなくて、部屋に入ることもできなかった。
どれくらいそうしていたのだろうか。
私がぐすぐす泣いていると、足音がした。
その気配に気づいて顔を上げた。
「!?」
実弥だった。
私はその顔を見て、ほっとして、また泣いた。
「バカあああぁぁーー!!」
深夜にもかかわらず、泣きじゃくる私を実弥はぎゅっと抱きしめて、何回もごめんと謝っていた。
いや昨日は可愛く泣いてやったけど、私がごめんですませるような可愛い女の子ではないと、お前はよく知っているだろうが。
……と、怒り狂って現在に至るのである。