第11章 行かないでくれ
私は同棲に反対した。
だって一緒に暮らしていなくても喧嘩するのに、同棲なんてしたら絶対に面倒くさい。
と言ったのに実弥がどうしてもとしつこいほど頼んでくるし、実家にも…(まあ隣の家に住んでるけど)押しかけてきて頼みに来るので了承した。
というか、隣の家に住んでるならもういいのでは?一時は窓をへだてたマジのお隣の部屋に住んでたしあれが実質同棲では?いやあの時は好きでも何でもなかったけど。
と、まあ最初は同棲なんてする必要ないだろうと私は考えていた。
ただし条件つき。一年間という期間をもうけた。
『この一年間は同棲するけど、嫌になったらすぐに出ていく。』
実弥も了承した。それで、なんだかんだ二か月がたったのだが。
もう出ていきたい。
今回はどう考えても実弥が悪いし、だから今目の前にいる彼はすごく青ざめた顔でうつむいているんだ。
私は怒って一言も話さない。
何があったかと言うと、昨日の夜にさかのぼらなくてはならない。
実弥は帰りが遅い。
別にそれはいい。男だし、あんな筋肉ごりマッチョ誰も襲わないでしょ。まだ新任教師だから残業とかあるだろうし。それ以外にも友達付き合いとか飲み会とか…。
連絡一つくれれば文句はない。
けれど、その日は連絡がなかった。
今は真冬。いつも通りならいいけど、帰ってこなかったらどうしよう。その場合、同棲している私にも責任がある。
酔いつぶれて駅前で寝てるのだろうか。外は雪が降ってるし、凍傷とか心配だ。
明日はお休みの日だし、遅いのはかまわないけど、連絡がないのは怖い。
時計を見ると、深夜の三時だった。
真冬の寒い夜なのに、私はパジャマでじっとりと汗をかいていた。
電話してもメールしてもなにしても連絡が返ってこない。もう何時間もそうしている。他の人に聞こうにも、私は彼の交友関係を大して知らない。
これ以上は不安でどうにかなってしまいそうだったので、私は上着と手袋、マフラーを引っ張り出して雪の降り積もる真冬の夜に飛び出した。