第9章 霞と音の大学ライフーその弐ー
それにしても。
こいつデートってことわかってんのか?泳ぎたいって言うが、泳げなくても苦労しないだろうが…。
「まああいつはどうせ水着のお前とイチャコラしたいだけだろうし?もうここらへんでいいと思うぜ。」
「ええ!?何でですか!プールなんだから泳ぎたいに決まってるでしょ!?」
……ん?
「プールは泳ぐ場所ですよ!」
うん。
間違ってない間違ってない。
そうだな、そうだなー…。
霧雨に普通を求めちゃダメだよな…。
「あ、あのな、霧雨。とりあえず。聞け。」
俺は後輩を制して、カップルがプールに行くと言うのは泳ぐためではなく、他の場所と同じように恋人との時間を過ごすためだと話した。
しかし、話し終えた後にぽかんとしている霧雨の顔を見て俺は頭を抱えた。
「……ああ、もうこれはいいとして」
そんなことで気を落とす俺様じゃねえ。俺は改めて霧雨に向き直った。
「お前ら幼なじみなのに、何であいつカナヅチってこと知らねえんだよ?」
「中学からはプールは男女別だったし…。小学校の時もクラスの関係で授業では会わなかったし……高校はそもそも学校が別で…。それで隠し通せてたんですけど、まさかこんなところで…。」
霧雨は深いため息をついた。
俺はガシガシと髪をかいた。
そもそも、霧雨は俺じゃなくて俺の元嫁達に相談していた。それをあいつらが俺の方が教えるのがうまいと言って三人で泳ぎを教えてやってほしいと頼み込んできたんだ。
まあ断るわけにもいかないし、三人は張り切って霧雨の水着選んでたし。
さすが俺の嫁というか、センスが派手に良い。霧雨は多分露出を嫌がったんだろう。
白の記事に花柄のワンピース型の水着。痩せた細い手足がすらりとのびていて、白い肌が映える。
華美すぎないのが霧雨らしいが。
フリフリした袖があってもオフショルダーだし、スカートも短くて…うん。
男が好きそうだな。多分まきをが選んだんだろうな。