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キメツ学園ー番外編【鬼滅の刃】

第8章 遠く想ふ君たちへ


あぁ、こんなにも努力していたなんて。


鬼殺隊最強。


ずっと羨ましかった。この人が、羨ましかった。特別な力を持って生まれた素晴らしい才能の持ち主。

けれど人の道を踏み外した。罪を背負った人。


でも。


汗をだらだら垂らして、手を血まみれにして、打ち込み稽古を夜通しやるような、そんな人だったのね。

知らなかった。


あなたのこと、何にも知らない。


「霧雨さん、もうおしまいにしましょう。」

「なぜあなたは泣いているのです。その手を離してください。まだ終わっていません。」

「いいえ、終わっていますよ。もう打ち込み台がみんな壊れてます。」

「離してください。それなら素振りをしますから。」

「いけません。こんなに豆をつぶして。」


霧雨さんは無理に振り払うことはしなかった。

手が震えていた。
声も震えていた。

けれど、顔は満面の笑み。


「霧雨さん。私、木谷さんの言葉を伝えに来ました。」

「いいえ。もう遺書はもらいました。」

「違います。柱へ宛てたものです。あなたも聞かなくては。」


霧雨さんは震える手をそのままに、少し黙った。なので私は口にした。


「『これから先、更に激しい戦闘になるでしょうが、どうか生き残って、鬼のいない世界で笑ってください。

鬼のいない夜は、きっと星が綺麗で素敵だろうから。夜空を見上げて、刀なんて持たないで、お散歩でも。


どうか、笑ってください。
僕の愛する家族、鬼殺隊の仲間達。
』」


一部だけだが、確かに伝えた。

霧雨さんは、ぴたりと動かなくなった。


「………。」


と思えば、私から離れて、木刀を一本だけ持って構えた。

すっと目を閉じて、口にする。


「風の呼吸」


私は目を見開いた。
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