第7章 僕だけに見えるもの
熱が下がらないので今晩はダメだろう。ガラスに本部へ言伝てに向かわせた。
僕は任務に行かなきゃいけなかった。
さっさと終わらせてさっさと戻った。けど、もう太陽が見えそうだった。
屋敷に上がり込むと、人の気配がして、アイツが起きたのかと思ったけど違った。
「……。悲鳴嶼くん」
「木谷殿」
がぐったりとしながらも起き上がって、ぎゅっと彼にしがみつく…ていうか、抱きついていた。
……やって…しまった…。
「……ご…ごめん…」
ヤバイ。見てしまった。
どう見てもお取り込み中…。
「………いえ…こちらこそ」
悲鳴嶼くんが気まずそうにしている。一方で、は熱のせいではっきりとしないのか、力なくだらけている。
「頼むね。昨日から熱が出てるから。もし暇なら診療所にでも。田んぼの向こうにあるんだ。……ずっと向こうに。」
「……ありがとう。」
「あと、こそこそしてたの僕もう知ってるから、変な気をつかわないでくれ。」
そう言うと、申し訳なさそうに微笑んでぺこりと頭を下げた。
僕はさっさと立ち去った。
そして、ただただ虚しくなった。