第7章 僕だけに見えるもの
桜くんが、死んだ。
それで、なんだって?アイツも怪我したって。向かうのはアイツの屋敷だ。現場からはるか離れてる。藤の家はたくさんあるのに、誰も治療しないから。皆平気でアイツを見捨てるから。
無事か。は生きてるのか。桜くんが死んで、傷ついてはいないか。
「!!」
屋敷に飛び込む。
玄関に草履を脱いだが倒れていた。
「ねえどうしたの!大丈夫!?」
「う、……」
腹をおさえている。床に血だまりができていた。
……が止血できていない?何で?そんなに深いの?
「…ごめんね。」
僕は隊服の前を開いた。
傷は小さい。けれど…何と言うか、えぐれているようでどうも深い。
慌てて布をあてがっておさえつける。止血剤は持ち歩いているので、それも取り出す。効果あるだろうか。
「飲める?」
聞いても意識がほとんどない。
僕は迷わずに止血剤を口に含んで、の顔を両手でつつみこんだ。
やましい思いはない。
だから大丈夫。
なぜか、自分にそう言い聞かせた。
しばらくすれば血は止まった。はひどい熱を出してうなされている。
看病はしているが、良くなりそうにない。
「………さ…くら…く…」
すると、何やら呟きだした。
「さ……く、ら……く…」
僕はその様子を凝視した。
………。
「。もう終わったんだよ。今はお昼で太陽も見えるから、ね。」
言ったところで何になる。
この子はいっぱい傷ついてるのに。
「……桜くん…」
僕だって悲しくないわけじゃないさ。
けど、考えたって仕方ない。
死んだら返ってこないんだよ。