第7章 僕だけに見えるもの
が側にいてほしいのも、看病してほしいのも、優しくも力強く抱きしめてほしいのも、全部僕じゃない。
全部あの男だ。
僕はたまたま同期ってだけで幸運を手にしたにすぎない。
もし悲鳴嶼くんがいなかったら、彼女は僕を見てくれただろうか。
いや、それはないだろうな。
僕に不思議なものが見えていて鬼の子と囁かれて後ろ指をさされる限り、そんなことを言う資格はない。
僕はこんな感情のために剣士を名乗っているんじゃない。
集中しなきゃ。
僕は風柱。後釜もなかなか見つからないし、僕がちゃんとやらなきゃ。家で一人の母さんもいる。
もしに何かを伝えたいなら、この僕ごとごっそり変わって別人にならなきゃいけない。僕が僕である限り、僕はに恋をする資格なんてないから。
あぁ、でも見えてしまうんだ。
悲鳴嶼くんと僕に向ける感情の色は違うけど、君は僕を“好き”なんだよね。
けど、僕の“好き”とは違う。悲鳴嶼くんへのものとは違う。
悲しいよ。
そして、苦しいよ。
狂おしいほどに、が好き。
僕ね、上手でしょ?感情を隠すのは得意なの。昔から、鬼の子と呼ばれても何てことない顔をしてたし、この世のものではない人達に気づかれないように隠れてこそこそしてきたから。
だから君に伝わることはないし、伝える気もない。
もしも、けれど、もしも。
もしも、僕が、今日も明日も明後日も生きているなら。
今日も明日も明後日も、君を好きでいさせておくれ。