第6章 霞とボタンと解放感
私も彼より遅れてから会社に出勤した。……この会社、一応気に入ってるけど、あんまし給料良くないんだよな。
将来は独立してがっぽり稼ぎたい。あと数年は頑張らないといけないけど。すぐに結果できないだろうし、退職したらバイトとかするんだろうな。
「霧雨さん、おはよう。」
隣のデスクの人が声をかけてきたので挨拶を返した。
「ボタン閉め忘れてるよ。」
ぶっきらぼうに私のシャツを指差して言う。一つだけ開いていた。
「………ボタン三つ開ける人ってどう思います?」
「は?露出狂の話か何か?」
そう聞き返されて私はうやむやに誤魔化してボタンを閉めた。
家に帰った瞬間ボタンを三つ開けて鞄を部屋に投げた。先に帰っていた実弥が部屋から出てくる。
「おう、おかえり…」
「実弥!!」
私はビシッと彼を指差した。
「今!この時から!!私は君と同じだけのボタンを開けることにしました!!」
「……は?」
「よって!君が三つ開けるなら私も三つ開けます!!」
私が指を三本たててビシッと言い切ると、実弥は顔をしかめた。
「いや…待て、お前…その、お前が三つも開けると………服の中見えんだろうがよォ…!!」
「はーい明日からこれで会社行きます!!例え先輩から注意されても頑なに閉めません!!!!!」
本当にやるつもりはなかった。
実弥はふー、ふーと息を荒立ててギリギリと歯をならした。それが数分ほど続き、実弥が何か覚悟を決めたかのようにシャツのボタンを閉めた。
「………お前も閉めろ…」
「はーい!!それじゃ、ご飯食べましょ!!」
私はボタンを閉めて、実弥の肩にポン、と手を置いた。