第5章 岩が霞に笑うのでーその壱ー
姉妹が料理を作るまで、私達は二人でした。
「…本当に驚いたわ。子供は嫌いと言っていなかった?克服したの?」
「……まさか。」
「おい払えもしないし、鬼殺隊に入らせたくもないし、どうしようってところ?」
行冥が黙る。
「呆れた優しさね。でも、あなたはそのうち決断をだすのでしょうね。あの子たちにとっても、あなたにとっても良い決断を。」
「……お前ならこの状況をどうする。」
「さあ。ちょいとつまんで、そこらへんに捨ててしまうかもね。」
私は立ちあがり、すっと部屋の障子を開けた。
そこには妹がいて、一気に青ざめた顔になりました。
逃げようとするその両腕をちょいとつかんで、持ち上げました。
「ほ〜ら、捨てちゃうぞ〜」
「きゃあああ」
振り子のようにぶらぶらと振っていると、姉がやってきました。
「しのぶ!!や、やめてください!!」
妹がぴょんぴょんと飛んで私の腕をつかみます。ですが、私の腕にぶらさがっただけで止めることはできません。
「あらあらあ、遊びたいのお?遊びたいのね?それそれえ〜。」
「きゃあ!」
グルグル回って姉妹一緒にぶん回す。最初は怖がっていたけれど、次第ににこにこと笑いだしました。
「もう1回、もう1回!!」
「うふふ、いいですよ。」
最終的にせがんでくるようになりました。
「……何をやっているんだ。」
「ちょっとした運動です。さあ子供たち、ご飯はできたのかしら?」
「もちろんよ!!持ってくるわ!!」
「待っていてくださいね。」
二人は再び駆けて去って行った。
「……あんなに笑う姿は見たことがなかった。」
「子供ですから。」
私は再び座った。
「あのような子供たちがこちら側に来るのならば、私たちも覚悟を決めて向き合うべきなのよ、行冥。」
「……平和に暮らせばいい…そう考えるのは間違っているのか?」
「じゃあ聞くわね。“平和”って何?」
行冥が黙る。答えはきっと彼の中にあるけれど、口にできないんでしょうね。