第5章 岩が霞に笑うのでーその壱ー
私は姉妹と会ったことがあることを彼に話しました。
「私達をいつの間にか置き去りにしたし、全然話を聞いてくれなかったわ。悲鳴嶼さんと同じよ。」
すると、勝手に妹がこの家で何をしているのかを話し出した。なんと、居候しているのだという。鬼殺隊に入るため。彼から剣を学ぶため。
「…私も困っているのだ。」
少し疲れたようにいうので、少しかわいそうに思えてきました。
「相変わらず優しい人ですね。おい払う方法なんていくらでもありますのに。」
「……すまない、今日の手合わせは…」
「わかっていますよ。」
そんなやり取りを聞いてか、姉妹たちが顔を曇らせた。
「申し訳ございません。私たちのせいで、何か不都合があったのですね。」
「…何の用だったの?」
しゅんとした様子で言われると、行冥は黙ってしまった。
「手合わせですよ。」
「手合わせ?」
「訓練です。互いの剣技を高め合うのです。」
私が言うと、二人は驚いていました。
「あなた隠じゃなかったの!?」
ああ、そういえばそんな勘違いされていましたね。
「ええ。そこの彼と同じですよ。」
「嘘。」
「ほ、ん、と、う」
すっと彼女たちに近よれば、ギョッとしたように遠ざかりました。反射的に行冥の大きな背中に隠れていきました。
「うふふ、かわいい。ずいぶんと懐かれていますね。」
「あまり怖がらせるな…。」
「うふふ。」
行冥はため息をついた。
「……もう帰ってくれ。」
呼んだのはあなたでしょうとか、言うことはしなかった。大変だったのでしょうね。約束を忘れるくらいには。
しかしそれを聞いて落ち込んだのは姉妹だ。自分たちが迷惑をかけてしまったと自覚はしているらしい。
「そうだ、私たちがご飯を作るわ。お詫びに!ね、食べて行ってよ!!」
「え」
「ああ、そうしましょう!腕によりをかけますから!!」
子供たちは私の言葉も聞かずに去って行ってしまった。
「いつもこの調子なんだ。」
「……。」
ああ、なるほど。これは約束も忘れるくらい大変です…。