第5章 岩が霞に笑うのでーその壱ー
「あの子達に平和はもうないわ。鬼がいる限り。」
「…ならば、こちら側に招くと?」
私は首を横に振った。
「あなたはあのかわいい子供たちがここを去るのを待っているのだろうけど、そんなことにはならないわ。あの二人はどうも本気だもの。なあなあにして放っておくのではなく、おい払うならそれ相応の相手をして、面倒を見るならそれお相応の相手をしなくては。ね?」
「……。」
「それが“覚悟”よ。」
次世代に繋げ。
亡き仲間からの教えを、私は守っていました。
「…そうだな。……お前にはいつも教えられてばかりだ。」
「いくらでも教えてあげるわ。私もそうだったもの。」
今はもういない仲間たちが教えてくれました。
私はずっと覚えています。忘れることはないでしょう。
「お待たせ!!ご飯よ!!」
そんな時に、子供たちが食事を持ってきました。
誰かと食事をするのは久しぶりで、ずいぶん楽しい時間でした。
「あの、本当にすみませんでした。お二人の約束のお邪魔をしてしまって…。」
「まあ…別にできないこともないですし、食べたらやります?疲れていますか。」
「かまわない。」
「だ、そうです。」
しゅんとした子供たちを見て罪悪感があったのでしょうねえ。
帰れと言っていたのに。
ご飯はどれも美味しかったです。この子たちは育ちが良いのでしょうね。
「ねえねえ、その手合わせって見てもいいの?」
「ダメだ。」
行冥がはっきりと言いました。
私はもぐもぐと咀嚼しながらしばらく話を聞いていました。
「何でよ!?見るくらいいいじゃない!!」
「ダメだ。」
「悲鳴嶼さんの邪魔はしないわ!!」
「そういう問題ではない。」
「どういう問題なのよ!!」
あ、この味噌汁おいしい。出汁がよくきいていますね。
「姉さんも見たいでしょ!?」
「もちろん…!!悲鳴嶼さん、どうかお願いします。」
「ダメなものはダメだ。危ないから言っているんだ。」
結局三人は食事が終わるまで言い合っていましたが、最後は行冥が折れました。
……やっぱり優しい人ですね。