第5章 岩が霞に笑うのでーその壱ー
ですが。
「そうですか。立派な目標ですねぇ。目標を持つことは良いことですよ。でも他の目標を持てばもっと素敵です。とりあえずはあなた達の住むお家ですね。帰れる場所ですね。」
「いえ、ですから」
「お家はいいですよ。」
認めるわけにはいきません。はいそうですかとは言えないのです。
「ふざけるのもいい加減にしてよ!!私たちは両親を殺されたのよ!?」
「甘ったれるのはやめなさい」
私は、相変わらずニコニコしていたけれど。その一言で姉妹が怯んだのがわかった。
「親を鬼に殺された人なんて何人もいますよ。あなた達だけ悲劇の主人公ではありません。」
「でも」
「私はあなた達を可哀想だとも何とも思いません。折角助かった命を捨てるようなことはやめなさい。」
妹は黙った。
しかし、姉は強気でした。
「全て覚悟の上です。私たちは本気です。」
「本気かどうかは知りません。鬼殺隊はあなた達のような幼子を必要とはしていませんよ。」
「お願いします、鬼殺隊について教えてください。」
私は姉の頬に手を伸ばし、そっと撫でてやりました。
「しつこいですね。何回でも言います。い、や、で、す。」
「きゃ」
そしてむにゅっとつねってやりました。
「姉さん!!…っ姉さんに何するのよ!!」
妹が私の手を姉から引きはなそうとしましたし、姉も私の手をはなそうとしていました。
けれど。
全くびくともしないことに、二人は驚いていました。
「……あなた、女よね…?」
「えっ女ですよ、ダメでした?」
…まさか、男だと思われてた??いや、そんなまさか。
「女の隠にもこんな力があるのね…!!」
キラキラとした目で妹から見つめられ、思わず姉から手を離しました。
…隠?
ああ、刀が見えないからか。