第4章 旧水柱は仲良くなれないー永遠ー
そんで次に来たのが木谷優鈴。
こいつもくせ者だった。
「ハカマくん」
「ハカナだよ」
名前を間違えてくるし。
「めんどいからあと君がやって-」
「あっこら帰らんでください」
任務も自分が用なしと悟れば放り出すし。
「ああいう奴から鬼殺隊を去るんだろうな」
「まあ、悲しいことを言いますね」
霧雨さんが目の前でカツ丼を食べながら言う。…この人、さっき天丼と玉子丼食べたよな…。定食屋の娘さんもビビってんじゃん。何でそんなに食べて体ガリガリなんだよ。燃費悪すぎだろ。
…逆にそんだけ食べてやっとそのほっそい体保ててるってことだよな。かわいそっ。
「ねぇ~…霧雨さん、安城さん、今なにしてんのかな。」
「………。」
何の脈絡もなく今は亡き仲間の名前を言うと、少し間を開けてから彼女は答えた。
「……走っているのではないでしょうか?」
「はハッ、あの人らしー。」
走るのが速くて、いつも風みたいに走っていた。羨ましかったし。衝突もしたけどさぁ。そんけーしてたよ。大好きだったよ。もっと一緒に遊びたかった。
「霧雨さん。」
「はい?」
彼女は箸を置いた。気づけば丼のなかは空っぽだった。食うのはやっ。
「僕って長生きすると思う?」
「さあ。わかりません。」
「薄情だな。もっと真面目に考えてよ。」
霧雨さんがクスリと笑った。
「真面目です。」
きっと、本気だったんだろう。
それでも僕は全力で肯定してほしかった。大丈夫、生きる、生き延びるよって…。
「木谷さんも真面目って言いたいの?」
「……優鈴には言っておきます。けど、優鈴はあなたのことを大切に思っているんですよ。」
「……。」
僕は仲良くなれる人がいなかった。
目の前の霧雨さんくらいとしか、仲良しと言えない。
僕は霧雨さんとしかこうして食事もしないし、会話も続かない。
だから、本当に大好きで尊敬していた。