第4章 旧水柱は仲良くなれないー永遠ー
お館様が会議を中断して、彼女の治療をしようと隠にさせていた。
いたそー。
怪我を見て単純にそう思った。
なのに、ずっと笑ってる。何この人。
「鬼にやられた…んじゃないわね。」
安城さんが治療の様子を見て言った。
「昨夜ご一緒した方がお亡くなりになるのを看取ったので、ご家族と親しい方にご挨拶をしていたのです。」
「真面目ね。隠に任せればいいのに。…あぁ、あなたの場合は隠が手伝ってくれないのね。」
「よさないか天晴。」
三人の会話が何だか不穏だった。
「ここはその方のお父様。」
その人はにっこり笑って脇腹を指差した。殴られたのか、青い痣があった。
「ここがお母様、この切り口はお兄様」
傷口を指さして淡々と説明していく。
「これは田中という隊士、これは天野という隊士。二人とも亡くなられた方の同期です。最後に、ここが大村という女性の隊士。どうやら恋仲にあったようです。」
「…何でそんなヒドイコトすんの?その人たち。」
僕は聞いていられずに思わず口を出してしまった。皆が僕を見る。
「柱にいらぬ期待をかける人達がいるんだよ。」
「私たちも人間。斬れない鬼や助けられない命もあるのよ。それを弱い弱い何もできないような隊士が恨んでくるのよ。」
「まあ、助けられない命があるのはたいそう惨めで屈辱的だけどね。」
氷雨さんと安城さんは忌々しそうに言った。
「けど、私たちも全力で挑んでいる。逆恨みされる筋合いは、ない。決して。」
氷雨さんが拳を握りしめて言う。
「……けど」
その拳を、ふっと開いて。
「…受け止められないから、その捌け口を誰しも探しているんだろうね。」
その言葉は何だか重く感じた。
たしかに、僕も妹を殺されたけど。どうにもできなくて、苦しい。その気持ちはわかる。
「私も顔面に一発喰らったことあるわ。それ以来、挨拶回りは隠に行かせてるの。……だって、胸糞悪いじゃない。」
胸糞悪い。
救えなかった命のことか、逆恨みしてくる奴らか、自分に対してか。
はたまた、その全部なのか。