第4章 旧水柱は仲良くなれないー永遠ー
「そうだね。私は鬼を斬ることも、そもそも走ることも難しい。」
すっと屋敷の中から人が出てきた。
噂をすればってやつ。お館様だ。
他の二人は数歩下がって、露骨にいやがる素振りを見せた。いや性格も悪いな。
礼とかした方がいいかな。でも、この人を敬う理由もちゃんとないし、とりあえず建前上だけでペコペコしたりするやつ僕嫌いなんだよね。やめとこ。
「初めまして、だね。桜ハカナ。」
「はい。初めまして、お館サマ。」
「ご覧の通りだよ。私には好きに接してくれてかまわない。」
他の二人を見て言う。…へえ、この態度許してるんだ。怒ったりしないで、傷ついた風にも見えないし。
「…そういえば、が今日はいないんだね。」
「何言ってんの、いるわよ」
知らない名前が出てきた。
安城さんが空を指さす。
「時間ぎりぎりとは珍しいですね、任務が長引いたので?」
氷雨さんが驚きもせずそちらに声をかける。
僕は驚いて声もでない。
屋敷の屋根の上に目が釘付けだ。
「いえ…野暮用です。」
烏がその側で羽を広げている。屋根の上にしゃがんでいるのは、僕と年の近い女の子だった。
安城さんより、綺麗な顔をしていると思った。けれど不気味なくらいニコニコと笑っていて…。
頬にはガーゼ、隊服の下から見える肌には包帯、頭にもグルグル巻きだった。
「あらやだ、怪我?」
安城さんがそう言うと同時に、屋根からおりてきた。
「野暮用です。」
「あ、こら、あんたまた自分で怪我の処置したわね。傷跡残るわよ。」
「そんなことありません。野暮用です。」
「野暮用ってそんなに便利な言葉じゃないからね?」
確かに包帯とかテキトーって感じ。
…ひどいな。血止まってないじゃん。包帯から赤いの見えてるし。