第4章 旧水柱は仲良くなれないー永遠ー
桜ハカナ。
別に嫌いじゃないけど、好きな名前でもない。
僕は鬼殺隊の水柱だ。別に好きでこんな仕事をしているんじゃなくて、しないといけないからしている。
入隊したての頃は柱になろうと躍起になっていたけれど、今となっては何でそんなに頑張っていたのかイマイチわかんない。
柱になったところでやることは同じ。階級にこだわらなくても良かったような。
「柱って言うのは、ただ鬼を斬るだけじゃないんだよ。」
「え」
会議前、産屋敷邸に誰よりもはやくついたので、庭で座って空をみながら考え事をしていた。
いつから来ていたのだろう。気づかなかった。
ていうか、誰。
僕、柱になってから初めて会議に参加するから他の柱の人わかんないんだよねー。平隊士の時から友達とかいないし、柱がどんな人かとか同期が話してるのも、輪には入ってなかったし。
「こんにちは。新しく水柱になった桜ハカナだよね。」
「はあ、そうですケド。」
「私は氷雨春風。✕柱だよ。」
…あれ?何て言ったんだろ。聞き逃した。
まあいいや。この人がどんな呼吸使ってようが興味ない。
「あらあら、新人くんもう来てるの?」
その後ろから大きな女口調の男が姿を表した。
「へえ。」
僕を見るなりすっと目を細めた。…見定められたな。この人、初手で全部決めちゃう人だ。
「桜ハカナです。よろしくドウゾ。」
「私は安城天晴。良いわよ、よろしくしないで。」
その人はプイッと横を向いた。
……ナニコレ。感じ悪。
「ったく、今日は何の用で呼ばれたのかしらね。産屋敷には本当にうんざりだわ。」
安城さんが髪をかきあげる。……美人だな、この人。
「何よ」
僕が見ていたことに気づいたのか睨んできた。髪から手を離すと、はらりと綺麗に落ちた。
「…産屋敷が嫌いなの?」
「嫌いよ。」
「どうして。」
それを聞くと、氷雨さんと安城さんが顔を見合わせた。
「現場のことわかってないのに口出してくるし、変な指示出してくるし、あれもやるなこれもやるなってやかましいからよ。」
「まあ、私たちと馬が合わないのですよ。」
二人は穏やかに話していたが、相当嫌っているらしかった。
…お館様って好かれてる印象だったけど、柱からは嫌われてんだ。まあ僕は好きでも嫌いでもないけど。