第18章 寂しい気持ち
お館様は表情を崩さなかった。
「もちろん、全て承知の上だよ。」
「……わかりました。」
私はぐっと手を握りしめた。
そんなこと言われても、あの人への警戒心が消える訳じゃない。
どうしてだろう、いつもならどんな人とでも話せるのに。
この感情はなんだろう。
「あと、話が変わるのですが」
「何かな」
「桜くんへの任務、減らしていただけませんか?本当に疲れているみたいで…私がその分、見回りを増やします。」
「構わないけれどはいいのかい?」
「私は平気です。」
お館様は分かった、と頷いてくださった。
「ハカナとはまだゆっくり話したことがないから、私もわからないことが多いんだ。には多くのことを背負わせてしまってすまないと思っている。」
お館様はポン、と私の肩に手を置いた。その手が暖かくて嬉しくなった。
「いつか落ち着いて話せたらいいんだけど…ハカナはいつもすぐに帰ってしまうし、あまり私と話したいようではないからね。」
私は顔を下に向けた。
「そうですか」
なんとかそれだけ搾り出した。
「今日はもう帰ります。」
別れの挨拶が口から出ただけ自分を褒めたいです。
はあ、鬼狩りのことだけで悩んでいたいのにどうやらそうはならないみたいです。
お館様から離れて産屋敷邸の長い廊下を歩いていると、途中であまね様と鉢合わせた。
彼女は大きな目をじっと私に向けていた。
「お内儀様」
咄嗟に頭を下げた。
それに返すように彼方も頭を下げてくれた。
「あの」
その時、心に眠っていた感情が目を覚ました。
「お館様は鬼殺隊にとって、…私にとっても大切な人です。」
突然話し出した私にあまね様は驚いているようだった。
けれど口は止まらなかった。
「死んでほしくない人です。救いたい、って、思う、人です。」
うまく話せないけれど。
「ずっと守っていたいけどきっとできません。多分、私の方が先に死ぬと思うのです。」
でも、と言葉が続いた。