第18章 寂しい気持ち
明日いつどうなるかわからない身分で、お館様を守ることは難しい。いつだって気持ちと現実は噛み合わない。
死んでほしくない人が死ぬように。
「お内儀様が、お館様を裏切らないで、ずっと添い遂げてくださると言うのなら…私も安心できます。」
頭では分かっている。
「それなのに、ずっと…ずっと一緒に鬼殺隊のために働いていたお館様が、あなたに…あなたと結婚なさると聞くと…なんでかあなたを受け入れられないのです。」
「…霧雨様」
「……みんなの、お館様、だったのに…」
氷雨くん、安城殿、桜くん、私。
そして中心にお館様。
いつもみんながいるだけで楽しかった。
それなのにこの感情は。
「みんなのではないでしょ」
私が何も言えなくなった時、聞き慣れた声がした。あまね様が振り返ると、そこには桜くんがいた。
「面倒くさいよ、そういうの。あと余計なことしないでくれる?」
「何がですか」
「さっきの話、聞こえてきたよ。お館様に僕の仕事減らすようにお願いしてたの。」
彼は怒っているみたいだった。私は居心地が悪くなってしまった。
「言わせてもらうけど、思い詰めてんのは霧雨さんだけじゃないんだよ。」
「……。」
「僕だってこんな切羽詰まってるなか急に結婚だの言われて全く知らない人とよろしくやれなんて無理だもん。」
あまね様の目の前でそんなことを言うので、私は驚いた。しかしあまね様は表情ひとつ変えなかった。
「あんたに対する僕の評価としてはそんなもんですけど、まさか文句あるとか言わないですよね?全て“承知の上”で嫁いでるんでしょ?」
桜くんの物言いはひどかった。
だけど、私も同じようなことを彼女に言ったのだと思うと胸が苦しかった。