第18章 寂しい気持ち
走りながら私たちはみにくい争いを続けていた。
「ちょっと霧雨さん何逃げてんの!?」
「それはあなたもでしょう、桜くん。私はちゃんと帰るって言って出てきましたよ。」
「うっっるさいな僕はまだ子供なんだよ!!あんた年上だろ!?僕より先輩だろ!?」
「関係ありませんよ。私たちの階級同じですよね。」
「ていうかそんかことよりさぁ!!」
そして十分に離れたところでキュッと立ち止まり、同時に叫んだ。
「「結婚!!!!!!」」
ゼエゼエと肩で息をしてその場にしゃがみこむ。
「結婚」
「ケッコン」
「けっこん」
「けっ」
「こん」
私たちは再び叫んだ。
「「結婚!!!!!!!!!!!!」」
道行く人たちが変な顔で見てきたけど構ってられなかった。
そして再び走り、人のいない森まで行って、思い切り叫んだ。
「「けっこーーーーーーーーーーん!!!!!!!!!」」
叫ぶだけ叫んだあとは力尽きてその場に座り込んだ。
「嫁つれてきてんじゃねーよ…新しい柱つれてこいよ…」
「鬼殺隊が弱ってきてますからね。一族繁栄に尽力することも必要なのかもしれません。」
「くっそ」
桜くんは堂々と悪態をついた。
「そういえば桜くんってお館様のこと嫌いなんですか?」
「はい?」
「だって、会議の挨拶と業務連絡以外で話したところ見たことなくって。」
そう言うと、彼は悩むように首を捻った。
氷雨くんと安城殿はお館様に敬意を見せることはなかった。本部には反抗的だし、お館様の愚痴も平気で言っていた。
でも、二人から嫌いという気持ちは伝わってこなかったから、きっとお館様を思っての行動だったんだろうと思う。まだ若くて鬼殺隊のことを考えるにも未熟なところがあったから。
でも桜くんは違う。
お館様を前にして仕事はするけど、人間同士の会話というか…そういうやりとりはなかった。
「そうかもしれん。」
桜くんはぶっきらぼうに答えた。
「自覚なかったんですか?」
「そもそもあんまりあの人に興味ないし…。だって会議以外で会わんじゃん?剣士でもないし、身分が違うっていうかさ。」
これには驚きました。桜くんがお館様をそんな風に見ていたとは…。